就労移行支援体制加算は、「1人あたりの単位数 × 前年度の就労定着者の数」を、その年度の利用者全員について1日ごとに算定する加算です。就職して6か月続いた人が1人増えるごとに、翌年度の毎日の報酬が上がる仕組みなので、少人数の事業所ほど1人の就職の重みが大きくなります。
令和8年4月から、この「就労定着者の数」に2つの制限が入りました。前年度9月30日時点の利用定員数が上限になったことと、過去3年間にほかの事業所も含めて同じ人の就労で算定されていれば、原則として数えられないことです。
この記事は、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しにもとづく内容です。単位数は厚生労働省の報酬算定構造、令和8年4月の見直しは令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号、数え方は障害福祉サービスの留意事項通知(平成18年障発第1031001号、令和8年5月28日改正を反映)と令和8年度Q&A VOL.1で確かめました。
1. 計算の式
1日あたりの加算 = 1人あたりの単位数 × 前年度の就労定着者の数(上限:前年度9月30日時点の利用定員数)
これを、その日に利用した利用者全員について算定します。1人あたりの単位数は、サービスの種類と利用定員で決まり、B型は平均工賃月額、A型は評価点(スコア)でも変わります。
2. サービス別の1人あたりの単位数(定員20人以下)
| サービス | 1人あたりの単位数(1日) |
|---|---|
| 生活介護 | 42 |
| 自立訓練(機能訓練) | 57 |
| 自立訓練(生活訓練) | 54 |
| 就労継続支援A型(Ⅰ)7.5:1 | 評価点170点以上93 〜 60点未満50 |
| 就労継続支援A型(Ⅱ)10:1 | 評価点170点以上90 〜 60点未満47 |
| 就労継続支援B型(Ⅰ)平均工賃型6:1・7.5:1 | 平均工賃月額で93 〜 48 |
| 就労継続支援B型(Ⅱ)平均工賃型10:1 | 平均工賃月額で90 〜 45 |
| 就労継続支援B型(Ⅲ)利用者に応じた評価型6:1・7.5:1 | 42 |
| 就労継続支援B型(Ⅳ)利用者に応じた評価型10:1 | 39 |
B型(Ⅰ)の定員20人以下の内訳は、報酬算定構造では次のとおりです。
| 平均工賃月額 | 単位数 |
|---|---|
| 4万5千円以上 | 93 |
| 3万5千円以上4万5千円未満 | 86 |
| 3万円以上3万5千円未満 | 79 |
| 2万5千円以上3万円未満 | 72 |
| 2万円以上2万5千円未満 | 65 |
| 1万5千円以上2万円未満 | 58 |
| 1万円以上1万5千円未満 | 51 |
| 1万円未満 | 48 |
定員が大きくなるほど1人あたりの単位数は下がります。例えば生活介護は、定員21〜30人で20、81人以上で6です。令和8年6月にB型の基本報酬の区分の基準が見直されましたが、同月の告示改正ではこの加算の表は改正の対象になっていません。平均工賃月額をどの区分に当てはめるかは、指定権者に確認してください。基本報酬の区分の見直しはB型の報酬区分と平均工賃月額で扱っています。
3. 就労定着者の数え方
留意事項通知では、就労定着者を次のように定めています。
- 企業等に雇用された人:企業等との雇用契約にもとづく就労で、労働時間などの条件は問いません。A型事業所の利用者としての移行は除きます。B型では、施設外支援の対象となるトライアル雇用も除きます
- 雇用の継続期間が6か月に達した人:前年度のうちに6か月に達した人を数えます。例えば令和5年10月1日に就職した人は、令和6年3月31日に6か月に達したことになり、令和6年度の算定に使う「前年度(令和5年度)の就労定着者」に入ります
- 一時的に支援を受けた在職者:労働時間の延長や休職からの復職のために一時的に支援を受けた人は、労働時間の延長ならサービス終了日の翌日、復職なら実際に復職した日を1日目として6か月に達した人を数えます
- 転職した人:職場定着の努力義務期間中に労働条件の改善のための転職支援をし、離職後1か月以内に再就職して、最初の就職から通して6か月に達した人は数えます
4. 令和8年4月からの2つの制限
定員の上限
数えられる就労定着者は、当該年度の前年度の9月30日時点の利用定員数が上限です。令和8年度Q&A VOL.1の別紙6では、6月以降、国保連のシステムで「加算の算定に使う就労定着者数」がそのサービスの最低定員数(6人または10人)を超える請求に警告が出て、市町村が前年9月末の定員を確かめる流れが示されています。超えていれば請求の修正を求め、4月・5月分も確認して過大請求なら遡って返還させるとされています。
過去3年間の算定実績
過去3年間に、その事業所に限らずほかの事業所で、同じ人の就労についてこの加算が算定されていれば、原則として就労定着者に数えられません。ハラスメントなどやむを得ない事情で退職した人など、市町村長が適当と認める人だけが例外です。3年間の数え方は、体制届を受理した年度の前年度末日から起算します(Q&A VOL.1 問32)。
背景には、同じ利用者で繰り返し算定する事例がありました。厚生労働省の資料は、令和9年度改定に向けてこの加算のあり方を改めて議論するとしています。改定の全体像は令和8年度の期中改定のまとめで整理しています。
5. 計算例
例えば、B型(Ⅰ)定員20人以下、平均工賃月額2万円以上2万5千円未満の区分で、前年度の就労定着者が3人いる場合を考えます。
- 1人あたり65単位 × 3人 = 1日195単位(利用者1人につき)
- 1日平均17人が月22日利用すると、195 × 17 × 22 = 月72,930単位
- 1単位10円なら、月約73万円
3人のうち1人が、2年前に別のB型でこの加算の対象になっていた場合は、市町村長が認める事情がなければ2人で計算します。1日130単位になり、同じ利用状況で月48,620単位です。1人の違いで月約24万円、年間で約290万円の差になります。
6. 届出までの手順
- 就職者名簿を作る:就職日、就職先、雇用形態、前年度中に6か月に達した日を記録する
- 雇用の継続を確かめる:6か月に達した時点で、本人や就職先に継続を確認し、日付と方法を記録する
- 過去の算定実績を聞き取る:利用開始時とアセスメント時に、以前に利用した事業所と就職歴を本人や相談支援事業所から確かめる
- 定員と照らす:前年度9月30日時点の利用定員と比べる
- 4月中に届け出る:前年度の実績で決まる加算は、4月中の届出で4月から算定できる扱いです(留意事項通知 第一の1の(5))。別紙6では、事業所が「就労移行支援体制加算に関する届出書」を出し、指定権者が事業所台帳に登録する流れが示されています
様式と添付書類は指定権者ごとに違うので、指定権者の案内で確かめてください。
7. 落とし穴
- A型への移行を数えている:A型の利用者としての就労は就労定着者に入りません。
- 多機能型で同じ人を2つのサービスで数えている:B型と生活介護を併設していても、1人の就職はどちらか一方の実績です。多機能型の定員と人員の考え方は多機能型事業所の要件を見てください。
- 事業所台帳の定着者数と請求の定着者数がずれている:別紙6では、一致しない請求はエラーとして返戻の対象になるとしています。
8. まとめ
- 就労移行支援体制加算は「1人あたりの単位数 × 前年度の就労定着者の数」を利用者全員について毎日算定する
- 就労定着者は、企業等に雇用され前年度中に6か月に達した人。A型への移行は除く
- 令和8年4月から、定着者の数は前年度9月30日時点の定員が上限。過去3年間にほかの事業所も含めて算定された人は、市町村長が認める場合を除いて数えない
各サービスのほかの加算は、B型の加算一覧、A型の加算一覧、生活介護の加算一覧で整理しています。
