就労移行支援の収入は、就職後6か月以上の定着率で決まる基本報酬がほとんどを占めます。加算は、その上に体制と支援の実施で積み上げる形です。同じ定員20人以下でも、定着率5割以上の区分と定着率0の区分では、利用者1人1日あたり731単位の差があります。加算を1つ増やすより、定着率の区分が1つ上がるほうが収入への影響はずっと大きくなります。

令和8年度に入って就労移行支援で変わったのは、処遇改善加算の率と区分(6月)です。令和8年4月の就労移行支援体制加算の見直しや、6月1日以降の新規指定の特例は、就労移行支援には掛かりません。

この記事は、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しにもとづく内容です。単位数は厚生労働省の報酬算定構造、要件は障害福祉サービスの留意事項通知(平成18年障発第1031001号、令和8年5月28日改正を反映)、令和8年度の変更は令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号で確かめました。


1. 基本報酬:定着率の区分

就労移行支援サービス費(Ⅰ)は、利用定員と「就職後6月以上定着率」の組み合わせで決まります。定員20人以下の単位数は次のとおりです(報酬算定構造)。

就職後6月以上定着率単位数(1日)
5割以上1,210
4割以上5割未満1,020
3割以上4割未満879
2割以上3割未満719
1割以上2割未満569
0割超1割未満519
0479

定員21〜40人・41〜60人・61〜80人・81人以上でも同じ7段階の区分があり、定員が大きいほど単位数は下がります。あん摩マッサージ指圧師などの養成施設として行う場合は、就労移行支援サービス費(Ⅱ)という別の表になります。

収入の差の目安として、例えば定員20人で1日平均16人が月22日利用する場合を考えます。定着率3割以上4割未満なら879単位×16人×22日で月309,408単位、5割以上なら1,210単位で月425,920単位です。1単位10円なら、月に約116万円の差になります。定着率の具体的な計算方法(どの年度の、どの人を数えるか)は、留意事項通知と指定権者の届出様式で確かめてください。


2. 加算の一覧(単位数)

加算単位数主な要件(要約)
福祉専門職員配置等加算Ⅰ 15/Ⅱ 10/Ⅲ 6(1日)資格者の割合、常勤職員の割合や勤続年数
就労支援関係研修修了加算6(1日)研修を修了し実務経験のある人を就労支援員として配置
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算Ⅰ 51/Ⅱ 41(1日)重度の視覚・聴覚・言語障害のある利用者が一定割合以上で、対応できる職員を配置
高次脳機能障害者支援体制加算41(1日)高次脳機能障害の利用者が一定割合以上で、研修を修了した職員を配置
初期加算30(1日)利用開始から30日まで
訪問支援特別加算1時間未満187/1時間以上280(1回)利用が途絶えた人の居宅を訪問。月2回まで
欠席時対応加算94(1回)前々日・前日・当日の中止連絡を受け、相談援助をして記録。月4回まで
医療連携体制加算Ⅰ 32〜Ⅵ 100看護職員の訪問など。区分で要件が違う
精神障害者退院支援施設加算Ⅰ 180/Ⅱ 115(1日)精神障害者退院支援施設として行う場合
利用者負担上限額管理加算150(月1回)利用者負担額の合計を管理した
食事提供体制加算30(1日)低所得の利用者などに食事を提供した
移行準備支援体制加算41(1日)職員が同行するなどして職場実習や求職活動をした
送迎加算Ⅰ 21/Ⅱ 10(片道)送迎の回数と人数で区分。同一敷地内は100分の70
障害福祉サービスの体験利用支援加算Ⅰ 500/Ⅱ 250(1日)施設入所者などの体験利用を支援した
通勤訓練加算800(1日)外部の専門職員を招いて通勤の訓練をし、その費用を払った
在宅時生活支援サービス加算300(1日)居宅で利用する人に、事業所の負担で居宅介護などの職員を派遣した
社会生活支援特別加算480(1日)医療観察法の対象者や矯正施設を出た人などに特別な支援をした
地域連携会議実施加算Ⅰ 583/Ⅱ 408(1回)地域の就労支援機関などを交えたケース会議で計画を作成・見直した
緊急時受入加算100(1日)地域生活支援拠点等として緊急時に受け入れた
集中的支援加算1,000(1回)強度行動障害の状態が悪化した人への集中的な支援。月4回まで

福祉専門職員配置等加算の区分ごとの要件は福祉専門職員配置等加算の要件で、送迎加算は送迎加算の区分と算定ルールで説明しています。


3. 就労移行支援に特有の加算の要件

就労支援関係研修修了加算

就労支援員として、次の両方を満たす人を配置したときに算定します(留意事項通知)。

  • 就労支援に従事する者として1年以上の実務経験。就労移行支援の就労支援員の経験のほか、ハローワークなど就労支援機関、医療・保健・福祉・教育の機関、障害者雇用事業所などで、職業指導、職場実習のあっせんや求職活動の支援、就職後の職場定着の支援をした経験も数えられます
  • 厚生労働大臣が定める研修(平成21年厚生労働省告示第178号)の修了

就労定着者の割合が零だと算定できないため、新規指定から1年間は算定できません。

移行準備支援体制加算

職員が同行するか、職員だけで次の活動をした日に、その利用者について算定します。

  • 職場実習等:企業や官公庁での職場実習、その事前面接や期間中の状況確認、実習先の開拓のための職場訪問や見学
  • 求職活動等:ハローワークでの求職活動、地域障害者職業センターの職業評価、障害者就業・生活支援センターへの登録など

地域連携会議実施加算

ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、ほかの就労移行支援事業所、特定相談支援事業所、通院先の医療機関、支給決定をした市町村、障害者雇用を進める企業などの人を交えたケース会議を開き、専門的な意見をもとに就労移行支援計画を作成・見直した場合に算定します。サービス管理責任者が出席して説明した場合は(Ⅰ)583単位、それ以外の職業指導員・生活支援員・就労支援員が出席し、結果をサービス管理責任者に共有した場合は(Ⅱ)408単位です。(Ⅰ)と(Ⅱ)を合わせて、利用者ごとに月1回・年4回までです。開くタイミングは、利用開始時、3か月に1回以上のモニタリング時、標準利用期間を超える支給決定の更新時などが例に挙がっています。

通勤訓練加算

外部から専門職員を招いて通勤のための訓練をし、その費用を払った場合に算定します。専門職員は、視覚障害者の歩行訓練などの研修を修了した歩行訓練士などを指します。


4. 収入の組み立て方

  1. 定着率の区分を上げる:就職後の定着支援と、6か月の継続の確認の記録が基本報酬を左右します
  2. 体制の加算を固める:福祉専門職員配置等加算、就労支援関係研修修了加算は、配置が続く限り毎日算定できます
  3. 支援の実施に応じた加算を取りこぼさない:移行準備支援体制加算、地域連携会議実施加算、欠席時対応加算は、記録があれば算定できる場面が多い加算です
  4. 処遇改善加算の区分を確かめる:令和8年6月から率が変わりました
区分令和6年度改定の率令和8年6月からの率
加算Ⅰ1000分の103Ⅰイ 115/Ⅰロ 119
加算Ⅱ1000分の101Ⅱイ 113/Ⅱロ 117
加算Ⅲ1000分の8698
加算Ⅳ1000分の6981

令和8年度の改定全体は令和8年度の期中改定のまとめで整理しています。


5. 落とし穴

  • 移行準備支援体制加算を、事業所内の模擬面接や求人検索で算定している:対象は留意事項通知に挙がった職場実習等と求職活動等で、職員が同行するか職員だけで行ったことが条件です。
  • 地域連携会議実施加算の記録に、関係機関の意見と計画への反映が書かれていない:会議の日時と出席者だけでは、計画を見直したことが分かりません。
  • 研修修了者が退職したのに、就労支援関係研修修了加算の届出を取り下げていない:配置が崩れた月から算定できなくなります。
  • 多機能型でB型を併設している:B型を経て就職した人はB型の就労移行支援体制加算の実績になり、就労移行支援の定着率とは別に数えます。B型の側はB型の加算一覧、A型の側はA型の加算一覧で整理しています。

6. まとめ

  • 就労移行支援の収入の柱は、就職後6か月以上の定着率で決まる基本報酬
  • 加算は、体制(福祉専門職員配置等加算・就労支援関係研修修了加算)と実施(移行準備支援体制加算・地域連携会議実施加算など)で積み上げる
  • 令和8年度の変更は処遇改善加算の率と区分だけで、就労移行支援体制加算の見直しや新規指定の特例は掛からない

届出の様式・締切・添付書類は指定権者ごとに違います。算定の前に指定権者の案内で確かめてください。


7. 参考資料