障害福祉の特定事業所加算は、研修や情報伝達の体制、職員の資格や経験、重度の利用者への対応に取り組む訪問系の事業所を評価する加算です。居宅介護・同行援護・行動援護は(Ⅰ)20%・(Ⅱ)10%・(Ⅲ)10%・(Ⅳ)5%、重度訪問介護は(Ⅰ)20%・(Ⅱ)10%・(Ⅲ)10%を基本報酬に上乗せします。(Ⅰ)を取るには、体制・人材・重度者対応の3つの要件をすべて満たす必要があります。

この記事は、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しにもとづく内容です。割合は厚生労働省の報酬算定構造、要件は報酬告示・厚生労働大臣が定める基準(平成18年厚生労働省告示第543号)・留意事項通知(平成18年障発第1031001号)の内容を、厚生労働省の改定概要と指定権者(千葉市)の届出の手引きで確かめました。令和8年6月の告示改正で訪問系について変わったのは、処遇改善加算の率です。


1. 区分と要件の組み合わせ

区分居宅介護・同行援護・行動援護重度訪問介護満たす要件
(Ⅰ)+20%+20%体制+人材+重度者対応
(Ⅱ)+10%+10%体制+人材
(Ⅲ)+10%+10%体制+重度者対応
(Ⅳ)+5%なし体制(サービス提供責任者の研修計画)+常勤のサービス提供責任者の加配+中重度者対応

割合は基本報酬の単位数に掛けます。ほかの加算を含めた合計に掛ける処遇改善加算とは計算の土台が違います。


2. 体制の要件

居宅介護・同行援護・行動援護では、次のすべてが必要です。

  • 研修計画:従業者(登録ヘルパーを含む)ごとに、目標・内容・期間・実施時期を定めた研修計画を作り、実施する。(Ⅳ)はサービス提供責任者ごとの研修計画
  • 会議:サービス提供責任者が主宰し、従業者全員が参加する技術指導などの会議をおおむね月1回以上開き、概要を記録する。グループ別の開催やテレビ電話装置等の活用もできる
  • 文書による伝達と報告:サービスの前に、利用者のADLや意欲、主な訴え、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況などを文書等で伝え、終了後に報告を受けて記録する
  • 健康診断:常時使用する労働者に当たらない従業者も含め、1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で行う
  • 緊急時の対応方法の明示:対応方針、連絡先、対応可能時間を重要事項説明書などで利用者に示す
  • 新規採用者への同行研修:新しく採用したすべての従業者に、熟練した従業者が同行して研修する
  • 関係機関との連携(行動援護のみ):行動援護計画・支援計画シート・支援手順書を作るとき、医療機関や学校などから必要な情報の提供を受けて記録する(令和6年度改定で追加)

重度訪問介護では、会議の代わりにサービス提供責任者による個別の研修でもよいこと、伝達が毎月定期的であること、そして常時派遣が可能で、現に深夜帯も含めてサービスを提供していることが要件になります。


3. 人材の要件

要件内容
資格の割合(いずれか)介護福祉士が30%以上/介護福祉士・実務者研修修了者等が50%以上/常勤の従業者によるサービス提供時間が40%以上
同行援護で選べる要件国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科修了者等が30%以上/盲ろう者向け通訳・介助員で同行援護従業者の要件を満たす人が20%以上(令和6年度追加)
サービス提供責任者の経験すべてのサービス提供責任者が、実務経験3年以上の介護福祉士または5年以上の実務者研修修了者等。行動援護は中核的人材養成研修修了者が1人以上でもよい。重度訪問介護は重度訪問介護の実務6,000時間以上の人も含む
常勤のサービス提供責任者基準で2人以上必要な事業所で、常勤を2人以上配置

資格の割合は、前年度(3月を除く)または届出日の前3月の1月当たりの実績の平均を、常勤換算で出して計算します。(Ⅰ)は資格の割合・サービス提供責任者の経験・常勤2人以上をすべて満たす必要があります。(Ⅱ)は、資格の割合か、サービス提供責任者の経験と常勤2人以上の組み合わせか、どちらかを満たせば足ります。

(Ⅳ)では、基準で必要な常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所で、必要数を常勤で配置し、さらに基準を上回る常勤のサービス提供責任者を1人以上配置することが求められます。


4. 重度者対応の要件

区分割合数える利用者
(Ⅰ)(Ⅲ)(居宅介護・同行援護・行動援護)30%以上区分5以上、喀痰吸引等が必要な人(登録事業所のみ)、重症心身障害児・医療的ケア児(居宅介護)、行動関連項目18点以上の人(行動援護)
(Ⅳ)(同上)50%以上区分4以上と、上の欄と同じ人
(Ⅰ)(Ⅲ)(重度訪問介護)50%以上区分5以上と喀痰吸引等が必要な人(登録事業所のみ)

同行援護と行動援護では障害児を分母・分子から除きます。割合は前年度(4月〜2月)または届出日の前3月の1月当たりの実績の平均を、利用実人員で出します。利用回数(重度訪問介護は利用時間)で算出する方法を示している指定権者もあるため、指定権者の案内で確かめてください。

令和6年度改定で、居宅介護に重症心身障害児・医療的ケア児、行動援護に行動関連項目18点以上の人が加わりました。令和6年3月31日時点で加算を算定していた事業所は、令和9年3月31日まで従前の要件によることができます。


5. 打ち手:取れる区分を判定する手順

  1. 体制の書類をそろえる:研修計画、会議の議事録、伝達と報告の記録、健康診断の記録、重要事項説明書、同行研修の記録を1か月分並べます
  2. 資格の割合を計算する:前3月の勤務表から、資格別の勤務延べ時間を月平均にして割合を出します
  3. サービス提供責任者の経験を証明する:資格証と実務経験証明書を集めます
  4. 重度者の割合を計算する:前3月の利用実人員を区分と状態で分け、30%・50%に届くかを見ます
  5. 組み合わせで区分を決め、届け出る:体制届の締切は指定権者ごとに違うため、指定権者の案内で確かめてください
  6. 毎月、割合を記録する:届出の後も毎月の記録が必要です

重度訪問介護のほかの加算は重度訪問介護の加算一覧でまとめています。


6. 令和8年6月からの処遇改善加算の率

特定事業所加算の上に、処遇改善加算の率が令和8年6月から次のとおりになりました(障障発0331第1号・こ支障第78号、令和8年3月31日の通知の別紙1 表1-2)。

サービスⅠイⅠロⅡイⅡロⅢⅣ
居宅介護・同行援護44.6%45.6%43.1%44.1%37.6%30.2%
重度訪問介護37.2%38.2%35.7%36.7%30.2%24.8%
行動援護41.1%42.1%39.6%40.6%34.1%27.7%

改定の全体は令和8年度の期中改定の記事、率の読み方は処遇改善加算の加算率の記事で確かめてください。


7. 落とし穴

  • 会議に登録ヘルパーが参加していない:会議は従業者のすべてが参加するものです。欠席者への個別の伝達も記録します。
  • 健康診断を常勤だけにしている:常時使用する労働者に当たらない従業者も対象で、費用は事業主の負担です。
  • 経過措置が切れる時期を見落とす:令和6年3月31日時点の事業所の従前の要件は、令和9年3月31日までです。
  • 割合を下回った月の届出を忘れる:下回ったら直ちに届け出ます。減算の見落としと合わせて障害福祉の減算一覧も確かめてください。

8. まとめ

  • 特定事業所加算は体制・人材・重度者対応の組み合わせで(Ⅰ)〜(Ⅳ)が決まり、重度訪問介護は(Ⅲ)まで
  • 割合は基本報酬に掛け、資格と重度者の割合は届出後も毎月維持して記録する
  • 令和6年度改定で重度者の範囲などが広がり、既存の事業所は令和9年3月31日まで従前の要件でもよい

9. 参考資料