令和8年度(2026年度)の障害福祉サービス等報酬改定は、3年に1度の定期改定ではなく、令和9年度改定を待たずに行われた「期中改定」です。 改定率は+1.84%で、中身の大半は処遇改善加算の拡充です。処遇改善加算の見直しは令和8年6月1日から適用されています。

処遇改善のほかにも、次の見直しがありました。

  • 就労移行支援体制加算の算定ルール(4月施行)
  • 就労継続支援B型の報酬区分の基準(6月施行)
  • 6月1日以降に新たに指定を受ける一部サービスの単価の特例
  • 留意事項通知の改正による人員欠如減算の特例(5月28日)

事業所がいまやることは3つです。

  • 処遇改善加算の計画と賃金改善を6月以降の新しい率に合わせる
  • 誓約した要件を年度内に実行する
  • 令和9年度改定に向けて、自事業所の数字を把握しておく

このページは「報酬改定と処遇改善加算」の記事群の入口です。令和8年度に何が行われたかを一次資料で整理し、詳しい論点は各記事へ案内します。個別の取扱いは指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)によって運用が異なるため、判断の前に確認してください。


1. 令和8年度に実際に行われたこと

厚生労働省は、令和8年度の対応を「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定を待たずに、期中改定を実施する」と説明しています。

  • 改定率: 令和7年12月24日の大臣折衝事項で+1.84%(国費+313億円)
  • 改定事項: 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第53回(令和8年2月18日)で取りまとめ
  • 告示改正: 令和8年4月2日付(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号ほか)
項目形式施行・適用主な対象
処遇改善加算の拡充(対象職種の拡大、上乗せ区分の新設、相談支援への加算新設、要件の見直し)告示改正令和8年6月処遇改善加算の対象サービス全般・計画相談支援等
就労移行支援体制加算の見直し告示改正令和8年4月生活介護・自立訓練・就労継続支援A型・B型
B型の基本報酬区分の基準の見直し告示改正令和8年6月就労継続支援B型
応急的な報酬単価の特例告示改正令和8年6月1日以降の新規指定B型・共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)・児童発達支援・放課後等デイサービス
人員欠如減算の特例的な取扱い留意事項通知の改正(令和8年5月28日)同日以降人員基準のある事業所

処遇改善を6月にした理由は2つです。令和7年度補正予算の「障害福祉分野における賃上げに対する支援」が令和7年12月〜令和8年5月分を対象にしていたこと、令和6年度改定の処遇改善も6月施行だったことです。

出典は次のとおりです。


2. 令和6年度改定からの流れ

令和6年度改定(改定率+1.12%)は、処遇改善分について2年分を措置しました。狙いは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップです。3年目の対応は令和8年度の予算編成過程で検討するとされていました(「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」令和6年2月6日)。

その3年目の対応として行われたのが、令和8年度の期中改定です。流れを並べると次のとおりです。

  1. 令和6年4月: 令和6年度改定の施行。BCP・情報公表の減算、児発・放デイの時間区分、B型の報酬体系見直しなど。
  2. 令和6年6月: 処遇改善3加算を「福祉・介護職員等処遇改善加算」(Ⅰ〜Ⅳ)に一本化。
  3. 令和7年12月〜令和8年5月: 令和7年度補正予算による賃上げ支援。
  4. 令和8年4月・6月: 令和8年度の期中改定。
  5. 令和9年度: 次の定期改定。

令和6年度改定の要点(減算の新設、サービスごとの見直し)は、令和6年度改定の要点を記録した記事にまとめています。同じ時期の介護報酬の動きは介護報酬改定の整理で確認できます。介護も令和8年度に期中改定(改定率+2.03%)が行われています。


3. 処遇改善加算の見直し(令和8年6月施行)

令和8年度改定の中心です。資料1によると、見直しは次の4点です。

  1. 対象の拡大: 対象を福祉・介護職員から「障害福祉従事者」に広げ、加算率を引き上げました。障害福祉従事者に月1.0万円(3.3%)の賃上げを見込んでいます。

  2. 上乗せ区分の新設: 生産性向上や協働化に取り組む事業所向けに、加算Ⅰロ・Ⅱロを新設しました。従来の区分は加算Ⅰイ・Ⅱイになります。福祉・介護職員には月0.3万円(1.0%)の上乗せです。定期昇給0.6万円を含め、最大で月1.9万円(6.3%)を見込んでいます。

  3. 相談支援への加算新設: 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に、加算率5.1%の処遇改善加算を新設しました。

  4. 要件の見直し: 加算Ⅰ・Ⅱは次のどちらかが必要です。

    • キャリアパス要件Ⅳの年額を460万円以上に引き上げたものを満たす
    • 職場環境等要件を全体で14以上満たす

    加算Ⅲ・Ⅳは、職場環境等要件を全体で8以上満たす必要があります。いずれも令和8年度中の取組の誓約で満たせますが、実績報告で確認され、実施されなければ加算の一部または全部が返還の対象になります。

加算Ⅰロ・Ⅱロには「令和8年度特例要件」があります。区分ごとの加算率、計算方法、配分のルール、計画書の期限は、処遇改善加算の計算方法と配分の記事で詳しく整理しています。


4. 処遇改善以外の見直し

就労移行支援体制加算(令和8年4月施行)

対象は生活介護・自立訓練・就労継続支援A型・B型です。

  • 1年間に算定できる就職者の数に、定員数の上限を設けました。
  • 過去3年間に他の事業所でこの加算の算定実績がある利用者は、原則として算定できません。ハラスメントによる離職など、市町村長が認める場合は除きます。

背景には、同じ利用者で繰り返し算定する事例の指摘がありました。資料は、令和9年度改定に向けてこの加算の「あり方については改めて議論」するとしています。

就労継続支援B型の報酬区分(令和8年6月施行)

令和6年度改定で平均工賃月額の新しい算定式を導入した結果、平均工賃月額が約6千円上がりました。そこで各区分の基準額を、その半分の3千円引き上げます。

  • 令和6年度改定の前後で区分が上がらなかった事業所は対象外
  • 減収が3%程度に収まるよう中間的な区分を設ける
  • 区分七と八の境目は変えない

区分の届出の時期と様式は指定権者に確認してください。平均工賃月額と区分の関係はB型の報酬区分と平均工賃の記事で扱っています。

応急的な報酬単価の特例(令和8年6月1日以降の新規指定)

令和8年6月1日以降に新たに指定を受けた事業所に限り、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬に次の割合を掛けます。既存の事業所の単価は変わりません。

サービス特例の割合
就労継続支援B型1000分の984
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)1000分の972
児童発達支援1000分の988
放課後等デイサービス1000分の982

選ばれたのは、次の3つにすべて当てはまるサービスです。

  • 総費用に占める割合が1%以上
  • 令和6年の収支差率が5%以上
  • 事業所数が3年続けて5%以上増えている

次の場合は配慮措置として、従来の単価が適用されます。

  • 重度の障害児者への支援(医療的ケア区分、重症心身障害児の事業所、強度行動障害児支援加算を算定する場合など)
  • 特別地域加算の対象地域(離島・中山間地域)
  • 自治体の公募や開設補助によるもの

詳細はQ&A(VOL.1 令和8年3月31日VOL.2 令和8年7月13日)で確認できます。これから開設する方は、開業計画の収支をこの割合で作り直してください。

人員欠如減算の特例的な取扱い(令和8年5月28日の通知改正)

留意事項通知の改正(こ支障第148号・障発0528第1号、令和8年5月28日)で、次の取扱いができました。

  • 条件: 突発的で想定が困難な事象による、やむを得ない事情での欠如で、人員基準の1割の範囲内。事業所がハローワークや無料職業紹介で求人をしていること。
  • 効果: 1年に1回に限り、減算の開始を欠如が生じた月の翌々月まで繰り延べる。
  • 手続き: 別紙様式に有効な求人票の写しを添えて、翌月までに届け出る。
  • 例: 急病による1か月を超える休職、突然の退職が重なった場合など。

減算そのものの仕組みは減算の一覧で整理しています。この特例の対象や届出先は指定権者に確認してください。


5. 事業所がいまやること(チェックリスト)

確認すること見るもの
6月以降の処遇改善加算の区分と加算率で請求しているか報酬算定構造・体制届
賃金改善の見込額を新しい加算率で計算し直したか計画書
誓約した職場環境等要件・キャリアパス要件・特例要件を、年度内に実行する担当と期日を決めたか計画書・社内の実行計画
加算Ⅱロ相当額の2分の1以上を月給で払う設計になっているか(Ⅰロ・Ⅱロを算定する場合)賃金規程
B型は、新しい区分の基準で自事業所の区分を確認したか平均工賃月額の計算
就労移行支援体制加算は、定員上限と過去3年の算定実績を確認したか就職者名簿
新規開設・事業譲渡の予定がある場合、応急特例の対象かを指定権者に確認したか指定申請の相談記録
人員欠如の備えとして、ハローワーク等への求人を出しているか求人票

改定の後に収入と支出を見直す手順は、改定後の収支シミュレーションと予算見直しの記事にまとめています。改定前後の単位数で収入を比べる方法、加算の取り直し、人員配置の見直しを扱っています。


6. 令和9年度改定に向けた論点

資料1と大臣折衝事項は、令和9年度改定に向けて次の点を挙げています。

  • 効果の検証: 令和6年度・令和8年度の処遇改善と令和7年度補正予算の効果を、経営情報データベースや経営実態調査などで把握する。令和8年度の処遇状況等調査も行われています。
  • 上位区分の取得状況: 加算Ⅰ・Ⅱの取得がどこまで進んだかを踏まえた対応。460万円のような名目額の要件のあり方も見直す。
  • 事務負担: 申請の事務負担を減らす。
  • ベースアップの割合: 障害福祉は介護に比べて、加算のうち月給の引上げに回る割合が低いとされています。資料1は生活介護の例として、月給で配分される割合が加算Ⅳでは50%、加算Ⅰでは34%と示しています。
  • 制度の持続可能性: 利用者の増加を踏まえた対応。

進め方は、報酬改定検討チーム第55回(令和8年4月28日、厚生労働省のページ)で示されました。団体ヒアリング、論点整理を経て、令和9年年明け頃に改定案、3月頃に告示・通知という想定です。経営実態調査などの回答は次の改定の材料になります。 依頼が届いたら正確に回答してください。


7. 落とし穴

  • 誓約したまま実行しない: 令和8年度は多くの要件を誓約で満たせますが、実績報告で確認されます。実行しなければ返還の対象です。
  • 新規指定と既存事業所の混同: 応急特例は6月1日以降の新規指定だけが対象です。既存事業所の単価が下がったと誤解しないようにします。逆に、開設予定の事業所は特例を織り込まずに計画を立てないようにします。
  • B型の区分の届出漏れ: 基準が変わったので、平均工賃月額が同じでも区分が変わることがあります。
  • 資料の年度の取り違え: 令和6年度と令和8年度で加算率が違います。表の出典の年度を必ず確かめます。

8. このテーマの記事

記事で分かることリンク
令和6年度障害福祉報酬改定の要点(改定率、減算の新設、児発・放デイ・B型の見直し)令和6年度改定の要点
改定の後に収支を見直す手順(単位数の前後比較、加算の取り直し、人員配置)改定後の収支の見直し方
処遇改善加算の計算方法、区分と加算率、配分のルール、計画書と実績報告処遇改善加算の計算と配分
介護報酬の令和6年度改定と令和8年度の期中改定介護報酬改定の要点

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