障害福祉サービスの減算は、大きく2種類に分かれます。人員欠如・定員超過・個別支援計画の未作成は、所定単位数そのものを100分の70(長引くと100分の50)に下げる減算です。虐待防止・身体拘束の適正化・業務継続計画・情報公表の未対応は、所定単位数の1〜10%を差し引く減算です。前者は月の収入が3割から5割減るため、事業の継続に直結します。後者は率は小さいものの、書類と会議の不備だけで全利用者分が減るため、運営指導で見つかりやすい減算です。
令和8年度の報酬改定(臨時応急的な見直しを含む)では、これらの減算の割合は変わっていません。一方で、令和8年5月28日の留意事項通知の改正により、令和8年6月から、突発的な事情で従業者が1割の範囲内で欠けた場合に、年1回に限り減算の適用を猶予する特例が加わりました。
このページでは、主な減算を一覧表にまとめ、それぞれの詳しい解説記事へ案内します。数値の根拠は、厚生労働省の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号。最終改正はこ支障第148号・障発0528第1号、令和8年5月28日。以下「留意事項通知」)と、障害児通所支援の同種の通知(平成24年3月30日障発0330第16号。最終改正はこ支障第147号、令和8年5月28日)です。いずれも厚生労働省の令和8年度障害福祉サービス等報酬改定のページとこども家庭庁の同ページに掲載されています。
なお、運用の細部(届出の様式・期限、月数の数え方など)は指定権者によって異なります。 判断の前に必ず指定権者へ確認してください。
減算はなぜ起きるのか:2つの型
減算の仕組みを先に押さえておくと、一覧表が読みやすくなります。
「70%・50%」型:基準を満たさない状態でのサービス提供
人員欠如・定員超過・個別支援計画未作成は、指定基準で決められた体制を欠いたままサービスを提供したことへの減算です。算定できる報酬が所定単位数の100分の70になり、人員欠如と計画未作成は長引くと100分の50まで下がります。
留意事項通知は、いずれの減算についても「当該所定単位数は、各種加算がなされる前の単位数」とし、加算を含めた合計額を減らすものではないとしています。つまり減るのは基本報酬の部分です。ただし加算のなかには人員配置や個別支援計画を要件に含むものがあり、そちらは加算ごとの要件で算定できるかどうかが別に決まります。
「差し引く」型:体制整備の未実施
令和6年度報酬改定で、虐待防止措置未実施減算(新設)、身体拘束廃止未実施減算(5単位から所定単位数の割合へ見直し)、業務継続計画未策定減算(新設)、情報公表未報告減算(新設)がそろいました(厚生労働省「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」令和6年7月版ほか)。
これらは、委員会・研修・計画・報告といった「やったことの記録」が残っているかどうかで判定されます。支援の質が高くても、議事録や研修記録が無ければ減算になります。
障害福祉サービスの主な減算一覧(令和8年度)
留意事項通知(令和8年5月28日改正後)の記載をもとにまとめました。「施設・居住系」は、療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練と、障害者支援施設が行う日中活動系サービスを指します(減算ごとに対象の列挙が少し異なるため、正確には通知本文を確認してください)。
| 減算 | 主な対象 | 算定される単位数・減算額 | 始まる時期と終わる時期 |
|---|---|---|---|
| サービス管理責任者の人員欠如 | 療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助など | 所定単位数の100分の70。減算の適用月から連続5月以上は100分の50 | 欠如した月の翌々月から、解消した月まで(翌月の末日までに基準を満たせば減算なし) |
| 従業者(生活支援員・世話人など)の人員欠如 | 同上 | 所定単位数の100分の70。減算の適用月から連続3月以上は100分の50 | 1割を超えて減少した場合は翌月から、1割の範囲内なら翌々月から(翌月末までに解消すれば減算なし)。令和8年6月から年1回の猶予特例あり(後述) |
| 定員超過利用 | 生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、療養介護、短期入所、施設入所支援など | 所定単位数の100分の70 | 日中活動系は、1日の利用者数が定員の150%を超えた日(定員50人以下の場合)、または直近3か月の延べ利用者数が「定員×開所日数」の125%を超えた月 |
| 個別支援計画の未作成 | 療養介護、生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助 | 所定単位数の100分の70。減算の適用月から連続3月以上は100分の50 | 未作成等に該当する月から、解消した月の前月まで(該当する利用者について) |
| 虐待防止措置未実施 | 全てのサービス | 所定単位数の1%を減算 | 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで |
| 身体拘束廃止未実施 | 居宅介護などの訪問系、日中活動系、施設・居住系 | 施設・居住系は10%、訪問・通所系は1%を減算 | 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで |
| 業務継続計画未策定 | 全てのサービス | 施設・居住系は3%、それ以外は1%を減算 | 事実が生じた月の翌月(初日に生じた場合はその月)から、解消した月まで |
| 情報公表未報告 | 全てのサービス | 施設・居住系は10%、それ以外は5%を減算 | 報告していない事実が生じた月の翌月(初日の場合はその月)から、報告した月まで |
定員超過の基準をもう少し詳しく
日中活動系(生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援など)の場合、留意事項通知は次のように定めています。
- 1日単位:利用定員50人以下なら、1日の利用者数が定員の100分の150を超えた日に、その日の利用者全員が減算
- 3か月単位:直近3か月の延べ利用者数が「利用定員×開所日数」の100分の125を超えた場合に、その1か月間の利用者全員が減算。ただし定員11人以下は「(定員+3)×開所日数」を超えた場合
- 療養介護・短期入所・宿泊型自立訓練・施設入所支援は、1日単位で100分の110、3か月単位で100分の105と、より厳しい基準
通知の例では、定員30人・月22日開所の場合、3か月の受入可能延べ人数は1,980人×1.25=2,475人です。
複数の減算に同時に該当したら
原則はそれぞれの減算を掛け合わせます。ただし定員超過と人員欠如の両方に該当する場合は、減算となる単位数が大きいほうだけを適用します(留意事項通知「複数の減算事由に該当する場合の取扱い」)。通知の例では、定員超過が100分の70、人員欠如が100分の50なら、100分の50で算定します。
また、1〜10%を差し引く型の減算は、複数に該当する場合、ほかの減算をした後の基本報酬(減算後基本報酬所定単位数)に対して割合を掛けると定められています。
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)の主な減算
児童発達支援・放課後等デイサービスなどは、こども家庭庁が所管する留意事項通知(こ支障第147号・令和8年5月28日改正後)で定められています。構造は障害福祉サービスとほぼ同じですが、児童向けに独自の「公表」の減算が2つあります。
| 減算 | 算定される単位数・減算額 | ポイント |
|---|---|---|
| 児童発達支援管理責任者の人員欠如 | 100分の70。連続5月以上は100分の50 | 翌月末までに配置できれば減算なし |
| 児童指導員・保育士の人員欠如 | 100分の70。連続3月以上は100分の50 | 1割を超える欠如は翌月から |
| 定員超過利用 | 100分の70 | 1日で定員の150%超(定員50人以下)、3か月平均で125%超 |
| 通所支援計画の未作成 | 100分の70。連続3月以上は100分の50 | 児発管の指揮の下で計画が作られていない場合など |
| 自己評価結果等未公表 | 100分の85 | 自己評価・保護者評価の結果の公表を都道府県に届け出ていない月から |
| 支援プログラム未公表 | 100分の85 | 5領域との関連を示した支援プログラムの公表を届け出ていない月から。令和7年4月1日から適用(愛知県の案内など) |
| 虐待防止措置未実施 | 1%を減算 | 委員会・研修・担当者のいずれかが欠けると該当 |
| 身体拘束廃止未実施 | 通所系は1%、障害児入所支援は10% | 記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けると該当 |
| 業務継続計画未策定 | 通所系は1%、障害児入所支援は3% | 計画の策定と、それにもとづく措置が必要 |
| 情報公表未報告 | 通所系は5%、障害児入所支援は10% | 報告していない事実が生じた月の翌月から |
自己評価結果等と支援プログラムの未公表減算は、「公表したか」ではなく「公表したことを都道府県に届け出たか」で判定されます。ホームページに載せただけで届出をしていないと減算になるため、届出の控えを保管してください。加算の全体像は放課後等デイサービス・児童発達支援の加算一覧で整理しています。
令和8年度に何が変わったか
減算の割合・対象は変わっていない
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の改定事項(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」令和8年2月18日)は、処遇改善加算の拡充(令和8年6月)と、臨時応急的な見直し(就労移行支援体制加算の見直し、就労継続支援B型の基本報酬の算定区分の見直し、新規事業所への応急的な報酬単価など)が中心です。上の表の減算の割合・対象は、この改定で変わっていません。 報酬改定そのものの全体像は令和8年度の障害福祉報酬改定のまとめをご覧ください。
令和8年6月から:従業者の突発的な欠如に年1回の猶予
令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に次の特例が新設されました。
- 対象:突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、人員基準上必要な員数から1割の範囲内で減少した場合
- 内容:1年に1回に限り、人員欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間、減算の適用を猶予する
- 要件:公共職業安定所(ハローワーク)または都道府県ナースセンター・福祉人材センター等の無料職業紹介事業を使って職員の確保に取り組んでいること。民間の職業紹介事業者を使う場合は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度の認定事業者を含めること。自社の採用情報のウェブ公表なども望ましいとされています
- 手続き:職員確保の取組とやむを得ない事情を別紙様式に書き、人員欠如が生じた月の翌月までに都道府県知事に報告する。報告時点で有効な求人票の写しを添付する
同日付のQ&Aは、「やむを得ない事情」の例として、職員や家族の突発的な体調不良などで1か月を超える不在が見込まれる場合や、職員の自己都合による急な離職が複数重なった場合を挙げています。また「1年」は、人員欠如が生じた日の属する月の翌々月の初日から数えるとしています。
注意点は、この特例が、生活支援員・世話人・児童指導員などの従業者の欠如を定めた項目に対する例外として書かれていることです。サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如は別の項目で定められており、通知の書き方からは、この特例の対象に含まれていません。適用できるかどうかは、報告の前に指定権者へ確認してください。
自事業所の点検チェックリスト
運営指導の前に、少なくとも次の項目を確認してください。1つでも「いいえ」があれば、該当する減算の対象になる可能性があります。
人員・定員
- サービス管理責任者(児発管)は基準の員数どおり配置され、研修修了の要件を満たしているか(更新研修の期限切れを含む)
- 勤務形態一覧表の実績で、従業者の員数が毎月基準を満たしているか
- 1日の利用者数と、直近3か月の延べ利用者数が定員超過の基準を超えていないか
計画
- 全利用者の個別支援計画(通所支援計画)が、サビ管・児発管の指揮の下で作成・説明・同意・交付まで済んでいるか
- 見直しの期限(少なくとも6か月に1回以上)が過ぎた計画がないか
体制整備
- 虐待防止委員会を1年に1回以上開き、結果を従業者に周知したか(議事録があるか)
- 虐待防止の研修を1年に1回以上実施したか(記録があるか)
- 虐待防止の担当者を決めているか
- 身体拘束等の適正化の委員会・指針・研修がそろい、身体拘束をした場合の記録が残っているか
- 業務継続計画を策定し、計画にもとづく必要な措置を講じているか(研修・訓練の実施は運営基準上の義務)
- 障害福祉サービス等情報公表システムへの報告を済ませたか
- (児童)自己評価結果等と支援プログラムを公表し、都道府県に届け出たか
運営指導全体の準備は運営指導の対策ガイドと自己点検チェックリストで扱っています。
減算に該当したとき、該当しそうなときの打ち手
1. 報告してから請求する
人員欠如や計画未作成に該当しているのに、従前どおりの単位数で請求を続けることはできません。留意事項通知は、加算等が算定されなくなる状況が生じた場合に速やかに届出させるとし、届出をせずに請求した場合は不正請求となり、支払われた給付費は不当利得になるとしています。欠如が分かった時点で指定権者に連絡し、届出と請求の扱いを確認してください。
2. 「翌月末」の期限を先に押さえる
サービス管理責任者・児発管の欠如は、欠如が生じた月の翌月末までに基準を満たせば減算になりません。 例えば3月31日に退職して4月1日から不在になった場合、欠如が生じたのは4月なので、5月31日までに配置できれば減算はなく、間に合わなければ6月から減算です。退職の申し出を受けた時点で、この日付を逆算して採用と届出の予定を立ててください。サビ管の場合の詳しい手順はサービス管理責任者の欠如減算の解説に、児発管の場合は児発管が辞めたときの欠如減算の解説にまとめています。
3. 体制整備の減算は「改善計画」とセットで動く
虐待防止措置と身体拘束廃止の未実施減算は、事実が生じた場合に速やかに改善計画を提出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告する流れです。減算は、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続きます。虐待防止の要件と運営指導で見られる書類は虐待防止措置未実施減算の解説で整理しています。
4. 減算の回避と加算の取得は同じ台帳で管理する
人員の配置状況は、減算の判定にも、福祉専門職員配置等加算などの加算の判定にも使います。職員ごとの資格・常勤か非常勤か・勤続年数・研修の修了日を1つの台帳にまとめておくと、退職や異動のたびに減算と加算の両方への影響をすぐに確かめられます。資格者の割合で決まる加算は福祉専門職員配置等加算の解説をご覧ください。
実行時の落とし穴
- 「加算も全部減る」と思い込んで、試算を誤る:70%・50%型の減算は加算前の単位数にかかります。影響額は基本報酬の部分で試算してください。ただし、加算そのものの要件(人員配置など)を満たさなくなれば、その加算は別途算定できなくなります
- 委員会を「開いたつもり」:虐待防止委員会・身体拘束適正化検討委員会は、議事録が無ければ開催を示せません。法人単位での開催や、両委員会の一体的な開催は認められていますが、どの事業所の委員会として開いたのかが分かる記録にしてください
- 情報公表の報告を「一度やったら終わり」と考える:大阪府の案内などのとおり、情報公表の報告は年1回の定期報告が前提で、名称や所在地などは変更のたびに報告します。担当者の異動で途切れやすいため、年間予定に入れておきます
- 猶予特例を「サビ管・児発管にも使える」と考える:令和8年6月からの特例は、通知上は従業者の欠如についての例外です
- 月数の数え方を自己判断する:減算開始の月や、100分の50に切り替わる月の数え方は、解説によって例示が分かれています。自事業所の月を確定させるときは、指定権者に確認してください
このテーマの記事一覧
人員配置と減算について、論点ごとに詳しく解説しています。
- 児発管の欠如減算:児童発達支援・放課後等デイサービスで児発管が退職したときに、減算がいつから何%になるか、みなし配置が使えるか
- サビ管の欠如減算:生活介護・就労系・グループホームなどでサービス管理責任者が欠けたときの減算、研修体系(基礎・実践・更新)とみなし配置
- 福祉専門職員配置等加算:資格者の割合(35%・25%)や常勤職員の割合・勤続年数で決まる加算の区分と単位数、計算の分母
- 虐待防止措置未実施減算:委員会・研修・担当者の3要件と、運営指導で確認される記録
採用で欠如を防ぐ観点は、サービス管理責任者の採用と児発管の採用の記事で扱っています。



