障害福祉サービスのアセスメントシートは、利用者に面接して、その人の能力・置かれている環境・日常生活全般の状況を評価し、希望する生活と課題をつかむための記録です。根拠は指定基準第58条第2項〜第4項で、アセスメントは面接で行い、面接の趣旨を本人に説明して理解を得ること、自分で決めることが難しい人は意思・選好・判断能力を丁寧に把握することが求められています。
様式は自由ですが、シートの項目がそのまま個別支援計画の「課題」と「目標」につながる形にしておくと、計画の根拠が一続きになり、運営指導でも説明しやすくなります。
この記事は、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しを踏まえた内容です。令和6年度改定で、アセスメントにあたって意思決定支援を行うことが指定基準に明記されました。
アセスメントが求められる仕組み
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第58条は、アセスメントについて次のように定めています。
| 項 | 中身 | シートで残すこと |
|---|---|---|
| 第2項 | 能力、置かれている環境、日常生活全般の状況等の評価を通じて、希望する生活や課題等を把握する。自己決定の尊重と意思決定の支援に配慮しつつ、支援内容を検討する | 評価した事実と、そこから見えた課題 |
| 第3項 | 自ら意思を決定することに困難を抱える場合は、意思及び選好並びに判断能力等について丁寧に把握する | 意思や好みをどう確かめたか(方法と根拠) |
| 第4項 | 利用者に面接して行う。面接の趣旨を十分に説明し、理解を得る | 面接の日・場所・同席者、説明したこと |
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)の問82は、当初の個別支援計画は、サービス提供の場面でのアセスメントを基にする必要があることから、契約締結後1か月以内に作成することを基本とするとしています。面接だけでなく、実際のサービスの場面での観察もアセスメントの一部と考えると、初回の計画までの流れが組み立てやすくなります。
自己決定の尊重と意思決定支援の違いについて、同じQ&Aの問83は、自己決定ができる人はその決定を尊重することが原則で、意思を決定することに困難を抱える人は「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」を踏まえて支援するとしています。
シートに入れる項目の例
和歌山市が公開している「実地指導における主な指摘事例」は、アセスメント項目の例として、利用者のプロフィールと、生活や環境の把握(生活基盤、健康・障害・疾病、日常生活、コミュニケーションスキル、社会生活技能、社会参加、労働、家族支援)を挙げています。横浜市の「個別支援計画を作成するにあたって」(令和6年8月)は、アセスメントの前に、基本情報・家族構成・生活歴・他の施設の利用状況・利用に至った経緯・障害の状況・健康状態などを簡潔に整理したフェイスシートを作る流れを示しています。
これらをもとに、シートの項目と記入の例を整理すると次のようになります。
| 項目 | 確かめること | 記入の例 |
|---|---|---|
| 本人の希望 | どんな暮らし・働き方をしたいか | 例えば「作業の後に、友だちとお茶を飲んで帰りたい」と本人の言葉で書く |
| 生活基盤 | 住まい、収入、金銭管理、利用している制度 | 例えば「年金を家族が管理。小遣いは週ごとに受け取っている」 |
| 健康・障害・疾病 | 通院、服薬、体調の波、発作の有無 | 例えば「月1回通院。季節の変わり目に眠れなくなることがあると家族が話す」 |
| 日常生活 | 食事、入浴、排せつ、身だしなみ、移動 | できること・手伝いがあればできること・難しいことに分ける |
| コミュニケーション | 伝え方、理解の仕方、困ったときの表し方 | 例えば「写真カードを見せると、選んで指差しで答えられる」 |
| 社会生活技能 | 買い物、交通機関、時間の管理、約束の守り方 | 例えば「慣れた路線のバスには一人で乗れる」 |
| 社会参加 | 地域の活動、趣味、余暇 | 例えば「休日は家で音楽を聴いて過ごすことが多い」 |
| 労働 | 作業の経験、得意な作業、集中できる時間 | 例えば「細かい手作業は得意。騒がしい場所では手が止まる」 |
| 家族支援 | 家族の状況、支援の負担、家族の希望 | 家族の意向は本人の意向と分けて書く |
| 意思決定の支援 | 意思や好みをどう確かめたか | 例えば「2つの作業を実際に試してもらい、表情と取り組む時間で好みを推定した」 |
できないことだけでなく、できること・好きなことを書いておくと、計画の支援内容が「できることを生かす」形で書けます。 項目は、就労系なら労働、グループホームなら生活基盤と日常生活を厚くするなど、サービスに合わせて調整します。
情報を集める先
アセスメントは面接が基本ですが、面接だけでは分からないことを次の情報で補います。
- サービス等利用計画とそのアセスメント:相談支援専門員がまとめた、生活全体の目標と課題。個別支援計画はこれを踏まえて作る
- 他の事業所への照会:グループホームでは、利用の申込みの際に他の事業所に照会して状況を把握することが、サービス管理責任者の業務として定められています(第210条の6第1項第1号)
- 家族・医療機関からの情報:通院先や服薬の情報は、本人の同意を得てから取る
- サービスの場面での観察:体験利用や最初の数週間の様子。観察した日と場面を書く
集めた情報をどう計画に落とすかは、サービスごとにB型の個別支援計画の書き方とグループホームの個別支援計画の書き方で整理しています。
アセスメントの進め方
- フェイスシートを作る:基本情報と経緯を簡潔にまとめる
- 面接の趣旨を説明する:何のために聞くのか、聞いたことをどう使うのかを本人に分かる言葉で伝え、理解を得る(第58条第4項)
- 面接と観察で項目を埋める:本人の言葉はそのまま書き、職員の解釈とは分ける
- 意思決定が難しい人は方法を工夫する:選択肢を実物や写真で示す、時間を分けて何度か聞くなど、意思と選好を確かめた方法を記録する
- 課題をまとめる:項目ごとの事実から、本人の希望の実現を妨げていることを課題として書き出す
- 原案につなぐ:課題ごとに目標と支援内容の案を作り、個別支援会議で本人の意向を改めて確かめる
落とし穴
- チェック欄だけのシート:「自立・一部介助・全介助」に印を付けただけでは、どんな場面で何に困っているかが分かりません。場面と事実を1行添えます
- 面接の記録が無い:第58条第4項は面接を求めています。面接した日、場所、同席した人を必ず残します
- シートと計画がつながっていない:計画の課題に、シートのどの事実から導いたのかが分からないと、アセスメントに基づいた計画だと説明できません。シートの項目名と計画の課題の見出しを揃えると追いやすくなります
- 一度作って終わり:モニタリングには継続的なアセスメントが含まれます。見直しのときにシートの変化した項目を更新します(モニタリングの頻度と記録)
アセスメントを含む作成の手順が適切に行われていない場合、個別支援計画未作成減算の対象になり得ます。和歌山市の資料は、アセスメント・計画案・会議の議事録・本計画・モニタリングの手順ごとに記録が必要としています。
まとめ
- アセスメントは、面接で能力・環境・日常生活の状況を評価し、希望する生活と課題をつかむ手続き
- 自分で決めることが難しい人は、意思・選好・判断能力を丁寧に把握し、その方法を記録する
- 項目は、プロフィールに加えて、生活基盤、健康、日常生活、コミュニケーション、社会生活技能、社会参加、労働、家族支援を目安にする
- できること・好きなことも書き、シートの項目と計画の課題をつなげる
- 見直しのたびに継続的なアセスメントとして更新する
書類の点検の全体像は運営指導(実地指導)の準備で整理しています。相談支援事業所との役割の違いは相談支援事業所の役割も参照してください。
参照した資料
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号。第58条、第210条の6)(条文)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日。問82、問83)(PDF)
- こども家庭庁・厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(障害者関係)」(PDF)
- 和歌山市「実地指導における主な指摘事例(居住系 共同生活援助、施設入所支援)」(PDF)
- 横浜市「個別支援計画を作成するにあたって」(令和6年8月)(PDF)

