障害福祉の処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)の実績報告は、年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日までに、指定権者に出します。 令和8年度分は、令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月なので、通常は令和9年7月31日が期日です。
実績報告で確かめられるのは、主に「加算額以上の賃金改善をしたか」「賃金水準を下げていないか」「誓約した要件を整えたか」の3点です。この記事では、厚生労働省・こども家庭庁の通知「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日)と、「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日)にもとづいて、作る前に押さえておく点を整理します。
1. 提出の期限と様式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 様式 | 別紙様式3-1・3-2 |
| 期限 | 各事業年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日 |
| 令和8年度分 | 通常、令和9年7月31日 |
| 提出先 | 事業所の指定権者(都道府県知事・市町村長など) |
| 法人で一括 | 法人単位で一括して作成してよい。提出は各指定権者へ |
| 保存 | 根拠資料とあわせて2年間 |
| 押印 | 要しない |
通知は、様式を都道府県等で原則として変えないこととしています。ただし、提出の方法(電子申請、メールなど)や、国の様式に加えて求める書類は、指定権者の案内で確かめます。
加算の支払と、賃金改善の月はずれることに注意します。加算は算定した月の2か月後に支払われるので、年度の最後の月の分の加算が入るのは翌年度の5月です。支払われた加算を、いつの賃金改善に充てたかを、計画書のときと同じ考え方で整理しておきます。
2. 賃金改善額が加算額以上か
通知は、加算の算定額に相当する賃金改善を行わなければならないとしています。賃金改善には、基本給・手当・賞与等(退職手当を除く)と、それに伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができます。
賃金改善額の出し方(Q&A問1-1):
賃金改善額 = 加算を原資に賃金改善をした後の実際の賃金水準 - 加算を算定しない場合の賃金水準
加算を算定しない場合の賃金水準は、原則として、初めて処遇改善加算や旧3加算、交付金等を算定した年度の前年度の賃金水準です。推計が難しい場合は、令和7年度の賃金から加算や交付金等を原資とした額を差し引いて出してもよいとされています。
下回ったときの扱い
Q&A問1-9は、賃金改善額が加算額を下回ると、算定要件を満たさないものとして返還の対象になるとしています。ただし、不足する分を賞与などの一時金として職員に追加で配分すれば、返還を求めない取扱いとしてもよいとされています。
年度の終わりが近づいたら、次のように試算しておきます。
- 4月〜翌3月分の加算の見込額を合計する(4・5月と6月以降で加算率が違う)
- 同じ期間の賃金改善額の見込みを合計する
- 足りなければ、一時金の追加の配分を決め、年度内または実施期間内に支払う
加算率は「処遇改善加算の加算率|サービス別一覧」を参照してください。
令和8年度に新しく増えた加算額
令和8年度は、令和7年度と比べて増えた加算額(新規算定や上位区分への移行、6月以降の加算率の引上げで増えた分)について、過去の賃金改善の実績にかかわらず、新しく賃金改善を実施しなければならないとされています。新しい賃金改善はベースアップ(基本給等の一律の引上げ)が基本で、それだけで難しい場合は手当や一時金を組み合わせてもよいとされています。
3. 賃金水準を下げていないか
実績報告書では、「令和8年度の加算の影響を除いた賃金額」と「令和7年度の加算と独自の賃金改善の影響を除いた賃金額」を比べます。Q&A問1-2は、この比較が、加算や交付金等による賃金改善以外の部分で賃金水準を下げていないことを確かめるためのものだとしています。
職員が減ったり入れ替わったりして比べられない場合は、令和7年度の額を調整してよいとされています。
| 事情 | 調整の方法の例(Q&A問1-2) |
|---|---|
| 退職者がいる | その職員が前年度に在籍していなかったと仮定して、前年度の賃金総額を推計する |
| 新規採用者がいる | 同じ職で勤続年数などが同じくらいの職員が前年度にいたと仮定して推計する |
ベースダウン(賃金表の改訂による基本給等の一律の引下げ)をした場合は、この調整の対象ではありません。事業の継続のために賃金水準を下げて賃金改善を行うときは、特別事情届出書(別紙様式5)で、収支の状況、引下げの内容、改善の見込み、労使の合意の時期と方法を届け出ます。
4. 誓約した要件を整えたか
令和8年度は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ、職場環境等要件、令和8年度特例要件について、処遇改善計画書で令和9年3月末までに整えることを誓約すれば、申請の時点から満たしたものとして扱う特例がありました。誓約した場合は、令和9年3月末までに整え、実績報告書でその旨を報告します。
| 誓約した要件 | 実績報告で報告すること |
|---|---|
| キャリアパス要件Ⅰ・Ⅲ | 任用要件・賃金体系、昇給の仕組みを就業規則等で整え、周知したこと |
| キャリアパス要件Ⅱ | 研修の計画を立て、研修の実施または機会の確保をしたこと |
| キャリアパス要件Ⅳ | 460万円の賃金改善、または職場環境等の取組を全体で14以上行ったこと |
| 職場環境等要件 | 区分ごと・生産性向上の取組を実施したこと |
| 令和8年度特例要件 | 生産性向上の取組5以上(⑱・㉑は必須)または社会福祉連携推進法人への所属と、Ⅱロ(またはⅠロ)の額の1/2以上の基本給等の改善 |
報告しなければ、加算の返還の対象になり得ます。Q&A問8-2は、特例要件について一律に資料を出させることはしないが、根拠資料を用意し、求めがあれば速やかに出すこととしています(保存は2年間)。要件の中身は「障害福祉のキャリアパス要件」で整理しています。
5. 年度の途中の変更届を出したか
実績報告の前に、年度の途中で出すべき変更届を出し忘れていないかを確かめます。変更届出書(別紙様式4)は、変更後の算定を始める月の前月15日までに出します。
| 変更の内容 | 届出 |
|---|---|
| 合併などで計画書の作成単位が変わる | 変更届出書と計画書の様式 |
| 一括申請している事業所が増減した | 変更届出書と関係する様式 |
| キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲの適合状況が変わり、区分が変わる | 変更届出書と関係する様式 |
| キャリアパス要件Ⅴの適合状況が変わり、区分が変わる | 変更届出書と関係する様式 |
| 区分を変える・新しく算定する | 変更届出書と計画書の様式一式 |
| 処遇に関する就業規則の改訂だけ | 実績報告書を出すときに、改訂の概要を書いた変更届出書をあわせて出す |
加算の区分を変えたときは、体制届(算定を始める月の前月15日まで)も必要です。体制届の流れは、指定権者の案内で確かめてください。
6. 作る手順と落とし穴
- 加算の額を集める:4月〜翌3月分の加算額を、国保連の支払の通知からサービスごとに集めます。
- 賃金の額を集める:同じ期間の対象職員の賃金(基本給・手当・賞与)と、法定福利費の事業主負担の増加分を集めます。
- 基準の賃金水準と比べる:加算を算定しない場合の賃金水準と比べて、賃金改善額を出します。
- 前年度と比べる:加算の影響を除いた賃金額が前年度を下回っていないか、下回るなら入れ替わりの調整で説明できるかを確かめます。
- 誓約の報告を書く:誓約した要件ごとに、整えた日と中身を書きます。
- 根拠資料を綴じる:賃金台帳、就業規則、研修の記録、職場環境等の取組の記録などを、2年間保存できる形にまとめます。
落とし穴:
- 6月以降の加算率の引上げ分を、新しい賃金改善に充てていない
- 賃金改善額に退職手当を入れている(対象外)
- 通勤手当や扶養手当を「決まって毎月支払われる手当」として基本給等の改善に数えている(Q&A問1-3は、賃金には含めてよいが、基本給等には含まれないとしています)
- 誓約した要件を整えたが、実績報告書に書いていない
- 一括申請の法人で、一部の指定権者にだけ出している
チェックリスト
- 令和8年度分の期日(通常、令和9年7月31日)と、指定権者の提出方法を確かめた
- 賃金改善額が加算額以上になっている(足りなければ一時金で追加の配分をした)
- 令和7年度から増えた加算額を、新しい賃金改善に充てた
- 加算の影響を除いた賃金額が、前年度を下回っていない(または調整の根拠がある)
- 誓約した要件の整備を、実績報告書に書いた
- 根拠資料を2年間保存できるようにまとめた
7. まとめ
- 実績報告は最終の加算の支払月の翌々月末まで。令和8年度分は通常、令和9年7月31日
- 賃金改善額が加算額を下回ると返還の対象。一時金での追加の配分で返還を求めない扱いもある
- 加算の影響を除いた賃金額を前年度と比べ、賃金水準を下げていないことを示す
- 誓約した要件は令和9年3月末までに整え、実績報告書で報告する
個別の計算や扱いに迷う点は、指定権者の案内と、都道府県等が実施する処遇改善加算の相談窓口などで確かめてください。
参考資料
- 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(障障発0331第1号・こ支障第78号、令和8年3月31日)(福島県の掲載): https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/739427.pdf
- 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日)(福島県の掲載): https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/739801.pdf
- 福島県「令和8年度障害福祉サービス等処遇改善加算」: https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21035c/08shogukaizenkasan.html
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html

