運営指導の前の自己点検は、指定権者が公開している自己点検表を、国の「確認項目及び確認文書」の順に、書類と突き合わせながら埋めるのが基本です。運営指導の通知は原則として実施予定日の1か月前までに届き、確認されるのは原則として前年度から直近までの書類、利用者の記録は原則3名以内です(厚生労働省「集団指導・運営指導マニュアル」令和8年6月)。通知が来てから慌てないために、同じ範囲を先に自分たちで確かめておきます。

この記事では、厚生労働省が令和8年6月に示した「確認項目及び確認文書」と、熊本県・越谷市などが公開している令和8年度の自己点検表の項目をもとに、点検項目を 人員/運営/報酬(加算の根拠書類と減算)/虐待防止・身体拘束・BCP・感染症 の4つの表にまとめました。印刷して、担当者ごとに分けて使える形にしています。

表はサービス横断で共通する項目を中心にしています。人員の数や加算の要件はサービス種別ごとに違うため、最終的には指定権者の自己点検表(自分のサービスの表)で確認してください。 運営指導そのものの流れと、監査に切り替わる場面は運営指導(実地指導)の準備で整理しています。


自己点検表とは:国の確認項目と自治体の点検表

国の「確認項目及び確認文書」

厚生労働省は令和8年6月8日付の通知(障発0608第1号)で、障害福祉サービスの「集団指導・運営指導マニュアル」と、その附属の「確認項目及び確認文書」を示しました。確認項目は、サービス種別ごとに次の二つに分かれています。

  • 個別サービスの質に関する事項:設備、内容及び手続の説明及び同意、心身の状況等の把握、サービスの提供の記録、身体拘束等の禁止、個別支援計画の作成等
  • 個別サービスの質を確保するための体制に関する事項:従業者の員数、管理者、緊急時等の対応、受給資格の確認、業務継続計画の策定等、秘密保持等、情報の提供等、苦情解決、事故発生時の対応、虐待の防止、勤務体制の確保等、定員の遵守、非常災害対策、運営規程、衛生管理等、利用者負担額等の受領

項目ごとに「確認文書」(勤務実績表、個別支援計画、委員会議事録など)が決まっています。マニュアルは、運営指導では少なくともこの確認項目及び確認文書について、事業者等自身による点検が必要としています。

自治体の自己点検表

指定権者は、国の確認項目をもとに、条例の基準や報酬の項目を加えた自己点検表を公開しています。令和8年9月時点で確認できた例です。

公開元内容
熊本県令和8年度版をサービス種別ごとにExcelで公開。障害児通所支援の表は「運営」と「報酬」(サービスごと)のシートに分かれ、運営は基本方針・人員・設備・運営の順。運営指導の対象事業者は記入して提出し、それ以外の事業所は年1回のセルフチェックに使うよう案内
越谷市令和8年度の「実地指導点検表」を障害児通所支援・相談支援・訪問系・日中活動系・居住系・業務管理体制に分けて公開。事前提出資料として従業者名簿、従業者勤務体制一覧表、利用者数の様式を指定
三重県サービス区分ごとの自己点検表を公開し、県の運営指導でこの表を活用していると案内
北海道障害福祉サービスと障害児通所支援等の自己点検表をサービス種別ごとにExcelで公開
こども家庭庁児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などの「運営指導調書(自己点検表)」を公開

事業所が使うのは、自分の指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)の最新年度の表です。前回の運営指導で使った表を使い回すと、報酬改定で増えた項目が抜けます。


チェックリスト① 人員

国の確認項目では「従業者の員数」「管理者」「勤務体制の確保等」にあたります。

点検項目見る書類よくあるずれ
直接支援の職員の数が、利用者数(前年度平均)に応じた基準を常勤換算で満たしているか勤務実績表、出勤簿(タイムカード)、勤務体制一覧表、利用者数が分かる書類予定のシフトで計算していて、休暇・欠勤・退職を反映した実績では下回る月がある
利用者数(前年度平均)の計算が正しいか実績表、利用者数の算定表年度が替わったのに前々年度の平均で体制を組んでいる
サービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)を基準どおり配置し、常勤要件を満たしているか勤務実績、資格証・研修修了証、実務経験が分かる書類退職後も体制の届出を変えず、減算せずに請求している
管理者が専従か。兼務の場合、管理上支障のない範囲か管理者の勤務形態が分かる書類、勤務実績管理者が現場の欠員補充に常時入っていて、兼務の説明ができない
常勤の配置が必要な職種に、常勤の人がいるか雇用契約書、就業規則、勤務実績就業規則の所定労働時間を変えたのに、常勤換算の分母を変えていない
従業者の専従・兼務の状況が基準に合っているか勤務体制一覧表、兼務先の勤務実績同じ法人の別事業所との兼務時間が、両方の勤務表で重複している
資格が必要な職種・加算の要件になっている職員の資格を確認しているか資格証の写し資格証の写しが無い、氏名変更後の写しが無い
研修の機会を確保し、ハラスメント防止の方針を明確にしているか研修計画、研修実施記録、ハラスメント防止の関係書類研修をしたが記録(日付・参加者・内容)が残っていない

サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が欠けたときの減算の開始時期と率は、後述の③で案内する減算の一覧記事から、それぞれの詳しい記事へたどれます。


チェックリスト② 運営

「個別サービスの質に関する事項」と、体制に関する事項のうち運営にあたるものです。

点検項目見る書類よくあるずれ
重要事項を記した文書を交付・説明し、利用開始の同意を得ているか。障害の特性に応じた配慮をしているか重要事項説明書、利用契約書、説明・交付の記録報酬改定や料金の変更後、説明し直していない
受給者証で支給決定の有無・有効期間・支給量を確認しているか受給者証の写し更新後の受給者証の写しを取っていない
アセスメントを利用者との面接で行い、趣旨を説明しているかアセスメント記録、ケース記録アセスメントの日付が原案の作成日より後になっている
個別支援計画を、原案 → 計画作成会議 → 説明・文書による同意 → 交付の順で作成しているか。相談支援事業所にも交付しているか個別支援計画(原案・本案)、会議録、同意書、交付の記録同意日が計画の開始日より後。相談支援事業所への交付の記録が無い
少なくとも6か月に1回以上、モニタリングを行い計画を見直しているかモニタリング記録、見直し後の計画見直しの期限が過ぎた月がある
サービス提供のつど、提供日・内容を記録し、利用者の確認を受けているかサービス提供記録、利用者の確認が分かる記録定型文の記録が続き、実際の支援内容が分からない
運営規程に必要な事項(事業の目的と方針、従業者、営業日・時間、利用定員、サービス内容と費用、実施地域、緊急時の対応、非常災害対策、虐待の防止のための措置など)を定めているか運営規程、重要事項説明書、事業所の掲示虐待の防止のための措置に関する事項が入っていない
利用定員を超えていないか。超えた場合、やむを得ない理由と経過を記録しているか運営規程、利用者名簿、実績定員超過の日が続いているのに理由の記録が無い
利用者負担額や実費を正しく受領し、事前に説明・同意を得て、領収証を出しているか請求書、領収書、同意書、費用の内訳通常必要となる費用以外のあいまいな名目で徴収している
秘密保持の措置(退職後を含む)をとり、他の事業者へ情報を出すときに文書で同意を得ているか秘密保持の誓約書、就業規則、個人情報の同意書退職者から誓約書を取っていない
広告の内容が虚偽・誇大になっていないかパンフレット、ホームページ加算を算定していない体制(専門職の配置など)をうたっている
苦情の窓口を設け、受け付けた苦情と対応を記録しているか苦情受付簿、苦情対応記録、掲示物口頭で済ませた苦情が記録されていない
事故の発生時に市町村・家族等へ連絡し、状況と処置を記録し、再発防止を検討しているか事故対応マニュアル、事故対応記録、再発防止の検討記録ヒヤリハットはあるが事故報告の基準があいまい
非常災害の計画を定め、避難訓練を定期的に行っているか非常災害の対応計画、避難訓練の記録、消防用設備点検の記録火災だけで、水害・土砂災害を想定していない
事業所の名称・所在地・管理者などの変更を、10日以内に届け出ているか変更届の控え管理者やサービス管理責任者の交代を届け出ていない

変更届の期限(障害者総合支援法第46条)と、指定更新のときに届出漏れが表に出る仕組みは指定更新の手続きで説明しています。


チェックリスト③ 報酬(加算の根拠書類と減算)

国のマニュアルは、報酬請求指導では、届け出て算定している加算が要件に合っているかを確認し、加算の多くは要件ごとに必要な文書が違うため、確認文書以外の資料の提出も求めることがある、としています。人員体制の書類は職員配置が要件の加算・減算に、それ以外の加算は個別支援計画・支援記録・研修記録・会議録など要件に応じた資料が使われます。

加算:算定している加算ごとに根拠を1枚にまとめる

点検項目見る書類
体制の届出をした加算と、実際に請求している加算が一致しているか体制等状況一覧表(届出の控え)、請求明細
人員配置が要件の加算(職員の加配など)を、その月の勤務実績で満たしているか勤務実績表、勤務体制一覧表、資格証
実施が要件の加算(送迎、欠席時の対応、専門的な支援など)の記録が、請求した日ごとにあるか送迎の記録、欠席の連絡と相談援助の記録、支援記録、個別支援計画
計画や会議が要件の加算で、計画への位置づけと会議録があるか個別支援計画、会議録
研修や計画書の提出が要件の加算(処遇改善加算など)で、提出と実施の記録があるか計画書・実績報告書の控え、研修記録、賃金改善の記録

放課後等デイサービス・児童発達支援の加算ごとの要件は放デイ・児発の加算一覧で確認できます。

減算:当てはまる月が無かったかを確かめる

熊本県の令和8年度の自己点検表は、報酬のシートで次の減算を確認項目にしています(率は同表の日中活動系・障害児通所支援の記載)。

減算内容(点検表の記載の要旨)
個別支援計画未作成減算計画が作成されていない場合に加え、作成に係る一連の業務が適切に行われていない場合も対象。障害福祉サービスでは減算の適用月から2月目まで所定単位数の30%、3月以上連続で50%の減算
サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の欠如減算、職員の欠如減算人員基準を満たさない場合
定員超過利用減算利用定員を一定以上超えて受け入れた場合
情報公表未報告減算情報公表の報告をしていない事実が生じた翌月から、解消した月まで。所定単位数の100分の5
業務継続計画未策定減算業務継続計画の策定と必要な措置が無い事実が生じた翌月から、解消した月まで。所定単位数の100分の1
身体拘束廃止未実施減算・虐待防止措置未実施減算次の④の表を参照。所定単位数の100分の1
自己評価結果等未公表減算・支援プログラム未公表減算(障害児通所支援)自己評価と保護者評価の結果、支援プログラムを公表し、公表方法等を都道府県に届け出ていない場合

マニュアルは、人員基準を満たしていないのに減算せずに通常の単位数で請求していた場合、制度の解釈誤りや単純な事務的ミスを除き、架空請求と同等の不正請求と認めざるを得ない可能性があるとしています。減算は「当てはまったら自分から減算して請求する」ものです。減算ごとの開始時期と計算は障害福祉の減算一覧にまとめています。


チェックリスト④ 虐待防止・身体拘束・BCP・感染症

いずれも運営基準で求められる措置で、虐待防止・身体拘束・BCPは未実施の場合の減算があります。実施した証拠(議事録・研修記録・担当者の分かる書類)が無ければ、未実施と扱われます。

措置点検項目見る書類減算
虐待の防止虐待防止委員会を定期的に開き(年1回以上)、結果を従業者に周知しているか委員会の議事録、周知の記録虐待防止措置未実施減算(委員会・研修・担当者のいずれかが無い場合)
虐待防止の研修を定期的に行っているか(年1回以上。採用時にも実施)研修の実施記録同上
虐待防止措置を適切に行うための担当者を置いているか担当者を配置していることが分かる書類同上
身体拘束等の適正化緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合、態様・時間・心身の状況・理由を記録しているか身体拘束等に関する記録、個別支援計画身体拘束廃止未実施減算(記録・委員会・指針・研修のいずれかが無い場合)
適正化のための委員会を定期的に開き(年1回以上)、結果を周知しているか委員会の議事録同上
適正化のための指針を整えているか指針同上
適正化のための研修を定期的に行っているか(年1回以上。採用時にも実施)研修の実施記録同上
業務継続計画(BCP)感染症と非常災害に対応した業務継続計画を策定し、それに従った措置を講じているか業務継続計画業務継続計画未策定減算
計画を従業者に周知し、研修と訓練を定期的に行っているか周知の記録、研修・訓練の記録(減算の対象は策定と措置。研修・訓練は運営基準の項目)
計画を定期的に見直しているか見直しの記録
感染症・食中毒の予防予防とまん延防止のための委員会を定期的に開き、結果を周知しているか委員会の議事録
予防とまん延防止のための指針を整えているか指針
研修と訓練を定期的に行っているか研修・訓練の記録

委員会は、テレビ電話装置等を使って開くこともできます。開催や研修の頻度の目安は、サービス種別(通所・施設など)によって解釈通知の記載が違うため、自分のサービスの自己点検表の注記で確認してください。虐待防止の委員会・研修の中身は障害者虐待防止法への対応で詳しく扱っています。

身体拘束廃止未実施減算と虐待防止措置未実施減算は、熊本県の点検表の記載では、未実施の事実が生じたら速やかに改善計画を都道府県知事に提出し、3月後に改善状況を報告することとされ、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、利用者全員について減算されます。


自己点検の進め方

  1. 表を用意する:指定権者のホームページから、最新年度の自分のサービスの自己点検表をダウンロードする。多機能型なら、該当するサービスの表すべて
  2. 担当を分ける:人員は管理者と労務担当、運営と個別支援計画はサービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)、報酬は請求担当。④の各種措置は委員会の担当者
  3. 利用者3名を選ぶ:利用期間の長い人、最近利用を始めた人、加算の対象になっている人など、性格の違う3名を選び、アセスメントから請求までを一続きで追う
  4. 前年度から直近までの書類で確かめる:運営指導で確認される範囲と同じにする
  5. 「いない」「ない」に印を付けた項目を直す:規程や様式の整備で直せるものは直し、請求に影響するものは次の手順へ
  6. 請求の誤りを直す:支払が確定した分は市町村に過誤を申し立てて取り下げ、正しい内容で再請求する。手続きは国保連への請求と過誤を参照。減算の要否など判断に迷うものは、先に指定権者に相談する

点検で陥りやすい落とし穴

  • 足りない書類を後から作る:過去の日付の議事録や計画を新しく作ると、改ざん・虚偽報告を疑われます。マニュアルは、確認文書の不備で確認項目が確認できない場合や、虚偽報告・虚偽答弁が疑われる場合を、監査へ切り替える例に挙げています。無かったものは無かったと認め、いつから実施しているかを記録して改善を示してください。
  • 「いる」に印を付けるだけで終わる:自己点検表の「いる/いない」は、根拠の書類を開いて確かめて初めて意味があります。書類の保管場所を表の余白に書いておくと、当日すぐ出せます。
  • サービス管理責任者一人に任せる:人員と報酬は、管理者と請求担当でないと分からない項目が多くあります。担当を分けてください。
  • 減算を「指摘されてから」にする:減算に当たる状態に気づいたら、その時点で届出と減算をします。気づいていて放置した期間は、運営指導での説明が難しくなります。

参照した資料

  • 厚生労働省「障害福祉分野における指導監督」(掲載ページ
  • 「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」(令和8年6月8日障発0608第1号)別添2「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル」と附属の「確認項目及び確認文書」
  • 熊本県「指定障害福祉サービス事業者等 自己点検表について」(令和8年度版。障害児通所支援の表、日中活動系サービスの表)
  • 越谷市「障害福祉サービス 実地指導(令和8年度実地指導点検表等)」(掲載ページ
  • 三重県「障害福祉サービス事業に係る自己点検表について」(掲載ページ
  • 北海道「指定障害福祉サービス事業者等自己点検表」(掲載ページ
  • こども家庭庁「指導監査の標準様式等一覧」(運営指導調書(自己点検表)