就労移行支援の基本報酬は、利用定員の区分と「就職後6月以上定着率」の組み合わせで決まります。 定着率は、前年度と前々年度に、就職してから6か月に達した人の数の合計を、同じ2年度の利用定員の合計で割った割合です。分母が利用者数ではなく利用定員であることと、「6か月に達した年度」で数えることの2点を押さえれば、来年度の区分は自分で計算できます。
この記事では、令和6年度報酬改定の報酬算定構造と、令和8年5月28日に一部改正された報酬の留意事項通知(障発第1031001号)にもとづいて、計算の式、分子に入る人・入らない人、新規指定のみなし、届出の添付書類を整理します。令和8年6月の期中の見直しで、就労移行支援の基本報酬の単位数と定着率の計算方法は変わっていません(変わったのは処遇改善加算の率です)。
加算の一覧と、区分が1つ変わったときの収入の差は「就労移行支援の加算一覧」で扱っています。
1. 定着率の区分と単位数
就労移行支援サービス費(Ⅰ)は、利用定員の5つの区分と、定着率の7つの区分で単位数が決まります(1日あたり)。
| 就職後6月以上定着率 | 20人以下 | 21〜40人 | 41〜60人 | 61〜80人 | 81人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5割以上 | 1,210 | 1,055 | 1,023 | 968 | 935 |
| 4割以上5割未満 | 1,020 | 881 | 857 | 816 | 779 |
| 3割以上4割未満 | 879 | 743 | 711 | 664 | 625 |
| 2割以上3割未満 | 719 | 649 | 614 | 562 | 516 |
| 1割以上2割未満 | 569 | 524 | 515 | 494 | 478 |
| 0割超1割未満 | 519 | 466 | 446 | 418 | 392 |
| 0 | 479 | 432 | 413 | 387 | 364 |
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の養成施設として認定された事業所は、就労移行支援サービス費(Ⅱ)という別の表で算定し、定着率も前年度の1年分と最終学年の利用定員で計算します。この記事は(Ⅰ)を前提にします。
2. 計算の式
基本の式
就職後6月以上定着率 =(前年度に6か月に達した人数 + 前々年度に6か月に達した人数)÷(前年度の利用定員 + 前々年度の利用定員)
留意事項通知が示すポイントは次のとおりです。
- 分子は「その年度の中で6か月に達した人」:就職した年度ではなく、雇用の継続期間が6か月に達した年度で数えます。通知の例では、令和6年10月1日に就職した人は令和7年3月31日に6か月に達するので、令和6年度の人数に入ります
- 分母は利用定員:年度の途中で定員を変えた場合は、その年度の各月の利用定員の合計を月数で割った数を使います
- 2年度分を合算する:前年度だけの実績ではなく、前年度と前々年度の2年度分を足して割ります
分子に入る人・入らない人
| 区分 | 扱い |
|---|---|
| 企業等との雇用契約にもとづく就労(労働時間などの条件は問わない) | 入る |
| 6か月に達した後に退職した人 | 入る(達した年度の人数として残る) |
| 職場定着支援の義務期間(就職から6か月)の中で、労働条件の改善のための転職支援をした結果、離職後1か月以内に再就職し、最初の就職から数えて6か月に達した人 | 入る |
| 就労継続支援A型事業所の利用者としての移行 | 入らない |
| 施設外支援の対象となるトライアル雇用 | 入らない |
| 6か月に達する前に離職した人(上の転職の例外を除く) | 入らない |
一般の事業所に雇用されている人が、労働時間の延長や休職からの復職のために一時的に就労移行支援を使った場合は、起点が就職日ではありません。労働時間の延長なら就労移行支援の終了日の翌日、休職からの復職なら実際に復職した日を1日目として、6か月に達したかどうかを数えます。
3. 計算してみる
例えば、利用定員が前々年度・前年度とも20人で、6か月に達した人が前々年度5人、前年度7人の場合です。
- (5人+7人)÷(20人+20人)= 0.30 → 3割以上4割未満(定員20人以下で879単位)
同じ実績で、前年度の途中(10月)から定員を24人に増やしていた場合は、前年度の定員は(20人×6か月+24人×6か月)÷12か月=22人になります。
- (5人+7人)÷(20人+22人)= 約0.286 → 2割以上3割未満(利用定員24人なので21〜40人の列で649単位)
就職した人の数が同じでも、定員を増やすと定着率は下がります。 さらに定員が21人以上になると、単位数の表の列そのものが変わります。定員を増やす計画を立てるときは、増やした後の2年度で分子をどれだけ積めるかをあわせて見ます。
年度をまたぐ人の扱いに注意
3月までに6か月に達しない人は、当年度の計算に入りません。例えば前年度の11月に就職した人は、6か月に達するのが当年度の5月なので、翌年度の区分の計算で前年度の人数として数えます。年度末が近い時期の就職は、その年度の定着率には効かないことを前提に見通しを立てます。
4. 新規指定のみなしと3年度目の計算
4月1日に指定を受けた場合
| 年度 | 基本報酬の区分 |
|---|---|
| 初年度 | 定着率3割以上4割未満とみなす |
| 2年度目 | 原則はみなしのまま。初年度の実績(6か月に達した人数÷初年度の利用定員)が4割以上なら、実績で算定してもよい |
| 3年度目 | 「初年度の利用定員×30%」と「2年度目に6か月に達した人数」の合計を、初年度と2年度目の利用定員の合計で割った割合を使える |
通知の計算例では、初年度0人、2年度目10人、両年度とも定員20人の事業所は、3年度目の定着率が(20人×30%+10人)÷(20人+20人)=0.4となり、4割以上5割未満の区分です。初年度に就職者が出なくても、みなしの30%が分子に入るため、2年度目の実績が3年度目の区分を大きく左右します。
年度の途中に指定を受けた場合
年度の途中に指定を受けた事業所は、支援の提供を始めてから2年間(24か月)、3割以上4割未満とみなします。2年目は、支援の開始から1年間に6か月に達した人数をその1年間の利用定員で割った割合で算定してもかまいません。24か月を過ぎた月からその年度の3月までは、「1年目の利用定員×30%」と「2年目(13〜24か月目)に6か月に達した人数」の合計を、1年目と2年目の利用定員の合計で割った割合を使えます。
5. 届出と記録
前年度の実績で決まる区分なので、4月からの区分の届出は4月中に行うことが認められています。届出の締切と算定開始の関係は「障害福祉の体制届(加算届)」を参照してください。
留意事項通知は、指定権者が区分の届出を受けるとき、雇用契約書、労働条件通知書、雇用契約証明書の写しなどを添付資料として求め、就職日と届出時点での雇用の継続を事業者としても確かめたうえで届け出させるとしています。事業者が企業を訪ねて担当者に確認してもらう方法でもよいとされています。求める書類の種類と様式は指定権者によって違うので、所在地の都道府県・市に確認してください。
手元に置いておく記録
- 就職者ごとの就職日、雇用契約の相手、雇用形態(A型の利用者としての移行やトライアル雇用でないことが分かるもの)
- 6か月に達した日と、達したことを確かめた方法(本人・企業への確認の記録)
- 転職支援をした場合の、離職日と再就職日
- 年度ごとの各月の利用定員
落とし穴
- 分母に実際の利用者数を使って計算し、区分を高く見込んでいた
- 就職した年度で数えてしまい、年度末の就職者を前年度に入れた
- A型事業所への利用者としての移行を就職に数えていた
- 定員を増やした年度の定員を、年度末の定員で計算した(各月の平均で計算します)
- 新規指定の3年度目に、みなしの30%を使える計算を知らずに低い区分で届け出た
6. まとめ
- 就労移行支援の基本報酬は、利用定員の区分と就職後6月以上定着率で決まる
- 定着率は、前年度と前々年度に6か月に達した人の合計を、同じ2年度の利用定員の合計で割る
- 数えるのは6か月に達した年度。A型の利用者としての移行とトライアル雇用は入らない
- 新規指定は2年度(年度途中は24か月)を3割以上4割未満とみなし、3年度目は定員×30%を分子に足す計算が使える
- 届出には雇用契約書などの写しを添える。書類の種類は指定権者に確認
定着率とは別に、B型・A型・生活介護などから一般就労へ送り出したときの評価は「就労移行支援体制加算の計算」で扱っています。事業の収支の考え方は「経営・財務」の記事にまとめています。
参考資料
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)令和8年5月28日一部改正 新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf
- 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和6年4月): https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/2024040100006.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和8年3月31日)新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf
- 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(令和7年3月31日改正): https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf

