就労継続支援B型の収支は、2つに分けて考えます。 1つは、報酬(給付費と利用者負担)で職員の給与や家賃をまかなう「福祉サービスの収支」です。もう1つは、生産活動の売上から材料費などの経費を引き、残りを利用者の工賃として払う「生産活動の収支」です。事業所の利益は前者から出るもので、後者は原則として工賃に回ります。
この2つを分けたうえで、福祉サービスの収支は報酬区分 × 定員 × 利用率 × 開所日数でほぼ決まります。この記事では、国の経営概況調査の数字で平均像を押さえ、自分の事業所の損益分岐の利用者数を出す手順を整理します。根拠は、令和6年度報酬改定と令和8年6月の見直し後の告示・留意事項通知、基準省令です。
1. 国の調査で見るB型の収支
厚生労働省の経営概況調査・経営実態調査では、B型の収支差率と、収入に対する給与費の割合は次のとおりです。
| 調査 | 決算年度 | 収支差率 | 給与費の割合 |
|---|---|---|---|
| 令和5年経営実態調査 | 令和4年度 | 5.2% | 65.0% |
| 令和7年経営概況調査 | 令和5年度 | 6.0% | 66.2% |
| 令和7年経営概況調査 | 令和6年度 | 6.2% | 68.1% |
収支差率は「(障害福祉サービス等の収入 − 支出)÷ 収入」で、収入には事業収益のほか補助金や本部からの繰入金も含みます。令和5年経営実態調査では、1事業所あたりの年間の収入は約3,326万円、収支差は約174万円でした。障害福祉サービス全体(加重平均)の収支差率は令和6年度決算で6.5%で、B型はそれとほぼ同じ水準です。
給与費の割合が2年で2ポイント近く上がっている点は押さえておきます。処遇改善加算の率が令和8年6月から上がっていますが、加算は職員の賃金改善に充てるものなので、事業所の利益にはなりません。収支の見込みでは、加算分の収入と賃金改善の支出を同じ額で両側に置きます。
2. 報酬と工賃は別の財布
基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)は、B型の工賃について次のように定めています。
- 工賃は、生産活動の収入から生産活動に必要な経費を引いた額を払う
- 1人あたりの工賃の月額の平均は3,000円を下回ってはならない
- 工賃の水準を高めるよう努め、毎年度の目標水準と前年度の実績を利用者に知らせ、都道府県に報告する
- 就労継続支援の報酬(自立支援給付)を、賃金・工賃の支払いに充ててはならない(原則)
つまり、生産活動の赤字を報酬で埋めることは原則として想定されていません。 反対に、生産活動の黒字は工賃として利用者に返すのが基本です。事業所の運営費は報酬でまかない、生産活動の損益は工賃の水準として表れる、という構造です。
| 福祉サービスの収支 | 生産活動の収支 | |
|---|---|---|
| 主な収入 | 基本報酬・加算(給付費と利用者負担) | 受注・販売の売上 |
| 主な支出 | 職員の給与、家賃、光熱費、送迎費など | 材料費、外注費、生産活動に使う経費 |
| 残った分 | 事業所の収支差(利益) | 利用者の工賃 |
ただし、2つは切り離されてもいません。平均工賃月額が高いほど基本報酬の区分が上がるため、生産活動を伸ばして工賃を上げることが、福祉サービスの収支を良くする一番の道筋になります。区分の決まり方は「就労継続支援B型の報酬区分」で詳しく扱っています。
3. 報酬の収入を組み立てる
1日あたりの基本報酬
令和8年6月以降の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(職員配置6:1)・定員20人以下の単位数は、平均工賃月額によって590〜837単位です(令和6年度改定の前後で区分が上がらなかった事業所は、従来の区分表を使います)。例えば、平均工賃月額2万5千円以上2万8千円未満の区分なら726単位です。
1単位あたりの単価は地域区分で決まり、「その他」の地域は10円です。
月の基本報酬 = 単位数 × 地域単価 × 1日平均の利用者数 × 開所日数
例えば、726単位、1単位10円、1日平均17人、月22日開所の場合、726 × 10円 × 17人 × 22日 = 月2,715,240円(年で約3,258万円)です。これに送迎加算などの加算と処遇改善加算が加わります。加算の一覧は「就労継続支援B型の加算一覧」を参照してください。
区分が1つ動くと
同じ条件で、区分が726単位から738単位(平均工賃月額2万8千円以上3万円未満)に上がると、12単位 × 10円 × 17人 × 22日 × 12か月 = 年約54万円の差です。反対に、利用時間が4時間未満の利用者が全体の50%以上になると、基本報酬が100分の70になります。1日平均の利用者数が1人減ると、726単位の区分では月約16万円の減収になります。区分より利用者数のほうが影響が大きいことが多い点は、数字で確かめておきます。
4. 損益分岐の利用者数を出す
手順
- 月の固定費を出す:職員の給与と法定福利費、家賃、光熱費、車両費、事務費など、利用者数で大きく変わらない費用を合計します(処遇改善加算で払う賃金改善分は、加算の収入と相殺するので除きます)
- 1人1日あたりの報酬を出す:基本報酬の単位数に、ほぼ全員が対象になる加算を足し、地域単価を掛けます
- 1日平均の必要人数を出す:固定費 ÷(1人1日あたりの報酬 × 月の開所日数)
例えば、月の固定費が260万円、1人1日あたりの報酬が7,260円(726単位×10円)、月22日開所の場合、260万円 ÷(7,260円 × 22日)= 約16.3人です。1日平均17人が来ていれば、福祉サービスの収支は黒字になります。
職員の人数とのつり合い
固定費の大半は給与費です。6:1の報酬区分を取るには、職業指導員と生活支援員を前年度の平均利用者数÷6以上(常勤換算)置く必要があり、1日平均17人なら約2.9人です。これにサービス管理責任者と管理者が加わります。利用者を増やすと必要な職員も増えるので、利用者数と職員数を同時に動かして試算します。配置の数え方は「就労継続支援B型の人員配置基準」で整理しています。
利用率を上げる
損益分岐を超えるかどうかは、定員に対する1日平均の利用者数(利用率)で決まることが多くなります。利用者の獲得は、相談支援事業所や特別支援学校、医療機関とのつながりが中心です。当サイトの運営会社が運営する事業所検索サイトFindcareには、就労継続支援B型の事業所も公表データをもとに掲載されており、作業内容や写真、空き状況を追加できます(基本の掲載は無料です)。
5. 見落としやすい点
- 新規指定の1年目は低い区分:新たに指定を受けた事業所は、1年目(年度の途中の指定なら1年目と2年目)を平均工賃月額1万円未満の区分とみなします。さらに令和8年6月1日以降の新規指定は、令和9年度の報酬改定まで基本報酬が1000分の984です(除外される場合あり)。開設の収支計画では、初年度の報酬を低めに置きます
- 生産活動の赤字を放置する:工賃の原資が減り、平均工賃月額が下がって翌年度の区分も下がります。生産活動の収支は月ごとに見ます
- 工賃に報酬を回して区分を上げようとする:原則として認められていません
- 平均工賃月額3,000円を下回る:基準を満たさず、都道府県の指導の対象になります
- 処遇改善加算を利益として見込む:加算は賃金改善に充てるもので、収支差にはなりません
地域区分、加算の要件、新規指定の特例の除外の範囲は、指定権者の案内で確認してください。
6. まとめ
- B型の収支は、報酬で運営する「福祉サービスの収支」と、生産活動の収入から工賃を払う「生産活動の収支」に分ける
- 国の調査の収支差率は令和6年度決算で6.2%、給与費の割合は68.1%
- 報酬は「単位数 × 地域単価 × 1日平均の利用者数 × 開所日数」。区分の差より利用者数の差のほうが大きく効くことが多い
- 損益分岐の利用者数は「月の固定費 ÷(1人1日あたりの報酬 × 開所日数)」で出せる
- 工賃を上げると翌年度の区分が上がる。生産活動の収支を伸ばすことが、事業所の収支を良くする道筋になる
ほかの事業の収支の考え方は「経営・財務」の記事にまとめています。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第48回 資料4): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599113.pdf
- 厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」: https://www.mhlw.go.jp/houdou/2023/11/dl/h1115-1.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和8年3月31日)新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)令和8年5月28日一部改正 新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号): https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171

