生活介護の基本報酬は、「障害支援区分」「利用定員」「所要時間」の3つの組み合わせで1日あたりの単位数が決まります。 所要時間は、その日に実際に事業所にいた時間ではなく、生活介護計画に位置づけた標準的な時間で数え、送迎の時間は原則として含みません。
令和6年度報酬改定で、それまでの「開所時間や短時間利用の減算で調整する」形から、利用者ごとの1時間刻みの時間区分に変わり、生活介護サービス費の開所時間減算と短時間利用減算はなくなりました。とくに5時間台と6時間台の間で単位が大きく跳ねるため、開所時間や送迎ルートの組み方がそのまま収入に表れます。この記事は、厚生労働省の報酬算定構造(令和6年4月)、留意事項通知(令和8年5月28日改正)、解釈通知にもとづき、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しまでを前提に整理します。
1. 基本報酬を決める3つの軸
| 軸 | 区分の数 | 内容 |
|---|---|---|
| 障害支援区分 | 5 | 区分6・区分5・区分4・区分3・区分2以下 |
| 利用定員 | 10 | 5人以下、6〜10人、11〜20人、21〜30人、31〜40人、41〜50人、51〜60人、61〜70人、71〜80人、81人以上 |
| 所要時間 | 7 | 3時間未満、3〜4時間、4〜5時間、5〜6時間、6〜7時間、7〜8時間、8〜9時間 |
利用の対象は、50歳未満は区分3以上(施設入所支援と併せて使う場合は区分4以上)、50歳以上は区分2以上(同じく区分3以上)です。障害支援区分が重いほど、定員が小さいほど、時間が長いほど単位は高くなります。
単位数の例(定員11〜20人)
報酬算定構造から、定員11〜20人の単位数を抜き出すと次のとおりです(1日あたり)。
| 所要時間 | 区分6 | 区分5 | 区分4 | 区分3 | 区分2以下 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3時間未満 | 517 | 386 | 268 | 239 | 218 |
| 3〜4時間 | 646 | 483 | 335 | 300 | 273 |
| 4〜5時間 | 774 | 578 | 401 | 358 | 327 |
| 5〜6時間 | 904 | 676 | 469 | 419 | 381 |
| 6〜7時間 | 1,258 | 941 | 652 | 583 | 532 |
| 7〜8時間 | 1,291 | 966 | 669 | 598 | 545 |
| 8〜9時間 | 1,353 | 1,027 | 730 | 660 | 607 |
定員5人以下なら区分6の7〜8時間は1,672単位、定員21〜30人なら1,150単位です。定員の区分が1つ変わるだけでも単位が変わるので、定員の変更を考えるときは同じ表で比べます。
5時間台と6時間台の差
表を縦に見ると、5〜6時間から6〜7時間に上がるところで単位が大きく跳ねます。 例えば定員11〜20人の区分4の利用者は、5〜6時間が469単位、6〜7時間が652単位で、1日183単位の差です。月22日利用すれば約4,000単位になります。一方、6〜7時間から7〜8時間の差は17単位にとどまります。
時間区分の設計は、「6時間の支援を実際に組めるか」が分かれ目になると読めます。逆に、支援の中身が伴わないまま計画の時間だけを伸ばすと、後で説明がつきません(第4章)。
2. 所要時間の数え方
留意事項通知は、所要時間を「現に要した時間ではなく、生活介護計画にもとづいて行われるべき生活介護を行うための標準的な時間」で算定するとしています。送迎に要する時間は原則として含みません。
計画の時間と実際の提供時間が合わない状態が続くときは、生活介護計画の見直しを検討します。
標準的な時間に加えられる時間・例外
| 場面 | 扱い | 条件 |
|---|---|---|
| やむを得ず短くなった日 | 計画の標準的な時間で算定してよい | 道路状況・天候・本人の心身の状況など |
| 送迎が往復3時間以上 | 1時間を標準的な時間に加えられる | 必要なサービスを行う事業所が地域にないなど。片道は車両が事業所を出てから戻るまで |
| 短時間にならざるを得ない人 | 受け入れの準備や申し送りに実際に要した時間を、1日2時間以内で加えられる | 医療的ケアスコアに該当する人、重症心身障害者、行動関連項目10点以上の人、盲ろう者などで提供時間が6時間未満。サービス担当者会議で検討し、サービス等利用計画に位置づけられていること |
| 送迎時の居宅内の介助 | 1日1時間以内で加えられる | 着替え、ベッド・車椅子への移乗、戸締りなど。生活介護計画に位置づける |
| 家族の就業などで長くなる | 実際に要した時間に応じた単価で算定してよい | 介護を行う人の就業その他の理由で、計画の時間より長く日常生活上の世話を行う場合 |
施設入所者と8〜9時間
障害者支援施設が昼間に行う生活介護で、施設入所者は8時間以上9時間未満の基本報酬を算定できません。 同じ施設の生活介護だけを使う通所の人は、計画の時間に応じて算定できます。
9時間を超える支援
9時間を超える支援は、基本報酬ではなく延長支援加算で評価します。令和6年度改定で、9〜10時間が100単位、10〜11時間が200単位、11〜12時間が300単位、12時間以上が400単位(1日)になりました。施設入所者は算定できません。算定要件は「生活介護の加算一覧」で扱っています。
3. 時間区分は人員配置の数え方にも効く
所要時間は報酬だけでなく、人員の配置に使う「前年度の平均利用者数」にも影響します。解釈通知は、生活介護の利用者数を次のように数えるとしています。
| 算定している時間区分 | 利用者数への数え方 |
|---|---|
| 3時間未満・3〜4時間・4〜5時間 | 2分の1を乗じる |
| 5〜6時間・6〜7時間 | 4分の3を乗じる |
| 7〜8時間・8〜9時間 | そのまま(1人) |
延べ数を開所日数で割り、小数点第2位以下を切り上げます。新たに事業を始めた場合は、最初の6か月は定員の90%に、見込まれる所要時間に応じて2分の1または4分の3を乗じた数を使います。
短時間の利用者が多い事業所は、1人あたりの単位が低い代わりに、必要な職員の数も少なく数えられるということです。時間区分を変えるときは、報酬と人員の両方で試算します。人員の数え方は「生活介護の人員配置体制加算」と「常勤換算の計算」もあわせて確かめてください。
4. 時間区分を見直す手順
- 利用者ごとの計画の時間を一覧にする:障害支援区分、計画の標準的な時間、直近3か月の実際の提供時間を並べる
- ずれが続く人を拾う:計画より短い日が続く人、家族の事情で長くなっている人を洗い出し、計画の見直しにつなげる
- 例外に当たる人を確かめる:送迎が往復3時間以上の人、医療的ケアや行動関連項目10点以上で短時間にならざるを得ない人、送迎時に居宅内の介助をしている人を確かめ、計画とサービス等利用計画に位置づける
- 日課と送迎を組み直して試算する:6時間以上の支援を組める日課か、送迎の順番で到着時刻がずれていないかを見て、報酬と人員の両方で試算する
- 記録をそろえる:到着・出発の時刻、支援の内容、例外として加えた時間の根拠を日々の記録に残す
落とし穴
- 送迎の時間を所要時間に入れている:例外に当たらない送迎時間を含めると、過大請求になります。
- 計画の時間だけを伸ばす:日課や記録に6時間分の支援がなければ、運営指導で計画の妥当性を説明できません。
- 施設入所者を8〜9時間で請求する:入所者は算定できない区分です。
- 例外の時間を計画に書いていない:居宅内の介助や受け入れ準備の時間は、計画やサービス等利用計画に位置づけて初めて加えられます。
- 人員の数え方を旧来のまま:時間区分に応じた2分の1・4分の3の数え方を反映しないと、配置の判断を誤ります。
運営指導での確認の視点は「運営指導の自己点検チェックリスト」も参考にしてください。
5. まとめ
- 基本報酬は障害支援区分・利用定員(10段階)・所要時間(7区分)の組み合わせで決まる
- 所要時間は生活介護計画の標準的な時間で数え、送迎は原則として含まない
- 送迎が往復3時間以上、医療的ケア等で短時間にならざるを得ない人、送迎時の居宅内介助、家族の就業による延長には例外の扱いがある
- 5時間台と6時間台の間で単位が大きく跳ねる
- 時間区分は人員配置に使う利用者数の数え方(2分の1・4分の3)にも効く
- 令和8年6月の期中改定では、生活介護の基本報酬の単位は変わっていない
例外の時間を加えるときの確認書類や、計画の見直しの時期の扱いは、指定権者に確認してください。事業戦略の他のテーマは「経営・財務」の記事にまとめています。
参考資料
- 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和6年4月): https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/2024040100006.pdf
- 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)」(第45回 資料2、令和6年2月6日): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001204019.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)令和8年5月28日一部改正 新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成18年12月6日障発第1206001号)改正 新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf
- 厚生労働省「令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号」: https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf


