就労選択支援は、障害のある人が就労先や働き方を選ぶ前に、短期間の作業などを通じて適性や能力を評価し、本人の意向を整理するサービスです。 令和7年10月1日に始まり、就労継続支援B型を新しく使う人の多くは、原則としてこのアセスメントを経ることになりました。
実施できるのは、就労移行支援・就労継続支援の事業者で、過去3年以内に3人以上を一般就労へ送り出した事業者などに限られます。この記事では、基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知、報酬の留意事項通知(令和8年5月28日改正)、令和6年度報酬改定の概要(案)にもとづいて、指定の要件、人員、報酬と算定の注意点を整理します。令和8年6月の見直しで変わったのは処遇改善加算の率で、基本報酬の単位数は変わっていません。
1. 誰が利用するか
| 対象 | 時期 |
|---|---|
| 就労継続支援B型を新たに利用する人(B型の利用対象の要件に当たらない人) | 令和7年10月から、原則として就労選択支援のアセスメントを経てB型を利用 |
| 就労継続支援A型を新たに利用する意向のある人、就労移行支援の標準利用期間を超えて利用する意向のある人 | 報酬改定の概要(案)では令和9年4月以降に原則として利用する方針。ただし令和7年3月の留意事項通知は、当面の間A型の利用に当たって就労選択支援の利用は必須ではないとしている |
| 特別支援学校の生徒 | 高等部3年生以外の学年でも実施でき、在学中に複数回、職場実習の時期にも実施できる |
近くに就労選択支援事業所がない、または待機が生じる場合は、B型の利用前のアセスメントを就労移行支援事業所などが行うことも認められています。支給決定の期間は1か月が原則で、1か月以上かけた継続的な作業体験が必要な場合は2か月です。アセスメントの期間は2週間以内が基本とされています。
2. 指定を受けるための要件
実施主体
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 基本 | 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に3人以上の利用者が新たに一般の事業所に雇用された |
| 同等と認められる事業者 | 障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体設置の就労支援センター、障害者能力開発訓練事業を行う機関で、過去3年以内に合計3人以上が新たに雇用された |
| 同じ市区町村に就労選択支援事業所がない場合 | 指定申請前の過去10年間の任意の連続する3年間に、合計3人以上が新たに雇用された就労移行支援・就労継続支援の事業者も認めてよい |
| 運営が3年に満たない場合 | 利用を経て新たに雇用された人が合計3人以上いれば要件を満たす |
この要件での指定は次の指定更新まで有効で、更新時の要件は別に定めるとされています。
人員
- 管理者:1人(管理上支障がなければ兼務可)
- 就労選択支援員:常勤換算で、前年度の平均利用者数(新規指定は推定数)÷15以上。原則として専従
- 兼務:一体的に運営する生活介護・自立訓練・就労移行支援・A型・B型の常勤の職業指導員・生活支援員・就労支援員などの直接処遇職員は、サービス提供に支障がなければ就労選択支援員を兼ね、兼務した時間を常勤換算に入れられる
常勤換算の数え方は「常勤換算の計算方法」を参照してください。
研修
就労選択支援員は、就労選択支援員養成研修の修了者が行います。令和10年3月31日までは経過措置として、高齢・障害・求職者雇用支援機構などが行う「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修」(基礎的研修)またはそれと同等以上の研修の修了者も従事できます。
設備
訓練・作業室などは、面積や数の定めはありませんが、行う活動に応じた適当な広さと数を確保します。同じ敷地内の他の事業所の設備や備品は、運営に支障がなければ使えます。所有でなく貸与でもかまいません。
3. 支援の流れと算定できない場合
基準省令と解釈通知が定める流れは次のとおりです。
- アセスメント:障害の種類と程度、就労の意向と経験、必要な配慮と支援、適切な作業環境などを、短期間の作業などを通じて評価・整理する。行動観察が重要なため対面が基本
- 他機関のアセスメントの活用:障害者就業・生活支援センター、特別支援学校、障害者職業センターなどが原則1年以内に行った同様のアセスメントがあれば活用でき、不足分を追加する
- 多機関連携会議:本人、市町村、相談支援事業者、公共職業安定所などを招いて、就労の意向を改めて確認し意見を聞く(テレビ電話でも可)
- 結果の提供:アセスメントの結果を本人と相談支援事業者に提供する
- 連絡調整:結果を踏まえ、必要に応じて公共職業安定所などと連絡調整する
このうち実施していない事項がある利用者については、基本報酬を算定できません(利用者の都合で中断した場合は、実施できたところまで算定可)。算定の対象は利用者への直接支援で、本人が参加する多機関連携会議や企業訪問は含みますが、本人の参加を伴わない連絡調整だけの日は含みません。1日ごとの支援内容を記録に残します。
4. 報酬と減算
基本報酬
就労選択支援サービス費は1日1,210単位です。例えば、1人の利用者に10日間の直接支援をした場合は12,100単位で、1単位10円の地域なら12万1千円です。支給決定は1か月が原則なので、1人あたりの算定日数には上限があり、収入は利用者の数と回転で決まります。処遇改善加算は令和8年6月から、(Ⅰ)イで所定単位数の1000分の115などの率になっています。
減算
| 減算 | 内容 |
|---|---|
| 定員超過・人員欠如 | 定員を超えた受け入れや、就労選択支援員の不足がある場合に減算 |
| 特定事業所集中減算(月200単位) | 判定期間に利用を終えた人がつながった就労移行支援・A型・B型それぞれについて、最も多くの人がつながった法人の割合が80%を超えた場合(正当な理由がある場合を除く) |
| 業務継続計画未策定減算 | 就労選択支援は令和9年3月31日まで適用しない経過措置 |
| 身体拘束廃止未実施・虐待防止措置未実施・情報公表未報告 | 他のサービスと同様に対象 |
特定事業所集中減算は、1〜6月の判定期間の結果を10月〜翌3月に、7〜12月の結果を翌4〜9月に適用します。80%を超えた場合は9月15日または3月15日までに都道府県へ書類を出し、超えない場合も書類を5年間保存します。移行先が決まっていない人は、利用終了から少なくとも1年は移行先の把握を続けます。
中立性のための決まり
- 利用中の就労系サービスと同じ法人の就労選択支援は、更新や事業所の変更の検討のためには原則として使えない(近くに別法人の事業所がない場合を除く)
- 他の事業者から利用者の紹介を受けた対価として、金品などを受け取ってはならない
5. 始めるかどうかの判断
- 要件を満たすか:過去3年の就職者の記録(就職日、雇用契約の相手)を確かめる。就職者の数え方は「就労移行支援の定着率の計算」でも扱っています
- 兼務で回せるか:一体的に運営する事業所の職員が兼務できるか、本体の配置基準と加算の要件を崩さないかを試算する。多機能型の定員と人員の考え方は「多機能型事業所とは」を参照
- 研修の修了者がいるか:経過措置の期限(令和10年3月31日)までに養成研修の修了者をそろえる計画を立てる
- 地域の需要があるか:市町村と相談支援事業所に、B型の新規利用の見込みと、近隣の就労選択支援事業所の数を確かめる
- 中立性を保てるか:自法人のサービスへの誘導と見られない運営と、特定事業所集中減算の判定の記録
指定の申請様式、兼務の扱い、要件の確認方法は指定権者によって違います。申請前に所在地の都道府県・市に確認してください。
6. まとめ
- 就労選択支援は令和7年10月開始。B型を新しく使う人の多くが、原則としてアセスメントを経る
- 実施できるのは、過去3年以内に3人以上を一般就労へ送り出した就労移行支援・就労継続支援の事業者など
- 就労選択支援員を常勤換算で利用者÷15以上置き、養成研修の修了者が行う(令和10年3月31日までは基礎的研修の修了者も可)
- 基本報酬は1日1,210単位。アセスメントや多機関連携会議など必須の事項が欠けると、その利用者の基本報酬は算定できない
- 特定の法人への集中が80%を超えると月200単位の減算。同じ法人の利用者の扱いにも決まりがある
事業の組み立ての考え方は「経営・財務」の記事にまとめています。
参考資料
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号): https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成18年12月6日障発第1206001号)新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)令和8年5月28日一部改正 新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf
- 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)」(第45回 資料2、令和6年2月6日): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001204019.pdf
- 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(令和7年3月31日障障発0331第2号): https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和8年3月31日)新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf


