令和8年6月から、障害福祉の処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)が大きく変わりました。 変わったのは次の4点です。
- 対象を福祉・介護職員から「障害福祉従事者」に広げ、加算率を上げた
- 生産性向上や協働化に取り組む事業所向けに、上乗せの区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)を設けた
- 対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に、加算を新設した
- 加算Ⅰ・Ⅱのキャリアパス要件Ⅳを年額460万円に上げ、職場環境等要件の数を増やした
これは令和8年度の期中改定(改定率+1.84%)の中心で、障害福祉従事者に月1.0万円(3.3%)、生産性向上などに取り組む事業所の福祉・介護職員に月0.3万円(1.0%)の上乗せを見込んだものです。定期昇給0.6万円を含め、福祉・介護職員で最大月1.9万円(6.3%)の賃上げになるとされています。
この記事では、厚生労働省・こども家庭庁の通知「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日)にもとづいて、令和7年度からの変更点を整理します。期中改定の全体は「障害福祉の報酬改定2026」、加算額の計算と配分の考え方は「処遇改善加算の計算方法と配分」で扱っています。
1. 変更点の一覧
| 項目 | 令和8年5月まで | 令和8年6月から |
|---|---|---|
| 加算の対象 | 福祉・介護職員を中心に、事業所内で柔軟に配分 | 障害福祉従事者に拡大(加算率を引き上げ) |
| 区分 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ | Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ |
| 相談支援 | 対象外 | 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に加算率5.1% |
| キャリアパス要件Ⅳ | 1人以上が年額440万円以上 | 1人以上が年額460万円以上(職場環境等要件を全体で14以上実施していれば満たす) |
| 職場環境等要件(Ⅲ・Ⅳ) | 区分ごとに1以上(生産性向上は2以上) | 区分ごとに1以上(生産性向上は2以上)+全体で8以上 |
| 職場環境等要件(Ⅰ・Ⅱ) | 区分ごとに2以上(生産性向上は3以上、⑱必須)と公表 | 同じ(全体で14以上は、キャリアパス要件Ⅳの代わりになる) |
| 誓約の扱い | ― | 多くの要件を令和9年3月末までの取組の誓約で満たせる(実績報告書で確認) |
令和8年4月・5月は、令和7年度と同じ区分(Ⅰ〜Ⅳ)で、加算率だけ表1-1の率で算定しました。6月からが新しい区分と率です。
2. 加算率の引上げ
主なサービスの加算率は、次のように上がりました(加算Ⅰ・Ⅰイの比較)。
| サービス | 令和8年4・5月 Ⅰ | 令和8年6月から Ⅰイ | Ⅰロ |
|---|---|---|---|
| 居宅介護 | 41.7% | 44.6% | 45.6% |
| 生活介護 | 8.1% | 9.3% | 9.7% |
| 就労継続支援A型 | 9.6% | 10.8% | 11.2% |
| 就労継続支援B型 | 9.3% | 10.5% | 10.9% |
| 共同生活援助(介護サービス包括型) | 14.7% | 16.3% | 16.9% |
| 児童発達支援 | 13.1% | 15.2% | 15.8% |
| 放課後等デイサービス | 13.4% | 15.5% | 16.1% |
全サービスの率は「障害福祉の処遇改善加算の加算率」に一覧にしています。
3. 加算Ⅰロ・Ⅱロと令和8年度特例要件
加算Ⅰロ・Ⅱロは、加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に加えて、次の「令和8年度特例要件」を満たす事業所が取れる上乗せの区分です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (ア)または(イ) | (ア)職場環境等要件の「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」を5以上実施する(⑱現場の課題の見える化、㉑業務支援ソフト・情報端末の導入は必須) (イ)法人が社会福祉連携推進法人に所属している |
| (ウ) | 加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てる |
(ア)と(ウ)は、処遇改善計画書で令和9年3月末までに行うことを誓約すれば、申請の時点から満たしているものとして扱われます。重度障害者等包括支援・施設入所支援・短期入所・就労定着支援・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援はⅡロの率がないため、(ウ)は加算Ⅰロの加算額の2分の1以上を基本給等に充てます。
特例要件を満たす事業所は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲと職場環境等要件の整備も、令和9年3月末までの誓約で満たせます。初めて上位の区分を取る事業所にとっては、要件をそろえる前に算定を始められる年度です。
4. 相談支援への加算の新設
計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)に、加算率5.1%の処遇改善加算が新設されました。算定には、次のどちらかが必要です。
- 令和8年度特例要件:生産性向上の取組5以上(⑱㉑必須)か、社会福祉連携推進法人への所属
- 加算Ⅳの取得に準ずる要件:キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)、キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)、職場環境等要件(区分ごとに1以上、生産性向上は2以上)のすべて
どちらも、令和9年3月末までの誓約で申請できます。
5. 賃金改善で守ること
- 加算の算定額に相当する賃金改善(法定福利費等の事業主負担の増加分を含められる)を行う
- 6月以降の加算率の引上げで増えた加算額に相当する賃金改善は、過去の実績に関わらず新規に行う。方法はベースアップを基本とする
- 賃金改善の対象とする項目(基本給・手当・賞与など)を特定し、賃金水準を下げない(事業の継続のためにやむを得ず下げる場合は特別事情届出書を出す)
- 加算Ⅳの加算額(Ⅳ以外を算定する場合はⅣを算定したと仮定した額)の2分の1以上を、基本給等の改善に充てる(月額賃金改善要件)
職種間の配分は事業所の判断で柔軟に決められますが、経験・技能のある福祉・介護職員の処遇改善が重要であることに留意し、著しく偏った配分は避けます。
6. 事業所がやること
- 6月以降の区分を確かめる:届け出た区分(Ⅰイ〜Ⅳ)と加算率が、国保連への請求に反映されているかを確かめます。
- 誓約した取組を一覧にする:計画書で誓約した要件(キャリアパス要件、職場環境等要件、特例要件)を、担当者と期限つきで一覧にします。期限は令和9年3月末です。
- ベースアップを実施する:6月以降に増えた加算額に相当する賃金改善を、基本給等の引上げで行います。
- 公表を済ませる:加算Ⅰ・Ⅱを算定する事業所は、職場環境等要件の取組を、障害福祉サービス等情報公表制度やホームページで公表します。
- 実績報告に備える:令和8年度の実績報告書の期日は、通常の場合令和9年7月31日です(「処遇改善加算の実績報告」)。
キャリアパス要件の中身は「障害福祉のキャリアパス要件」で整理しています。
チェックリスト
- 6月以降の区分と加算率で請求している
- 誓約した取組の一覧(担当・期限・証拠の置き場所)がある
- 6月以降に増えた加算額に相当するベースアップを行った
- 月額賃金改善要件(加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等へ)を満たしている
- 加算Ⅰ・Ⅱの場合、取組を情報公表制度などで公表した
7. まとめ
- 令和8年6月から、対象が障害福祉従事者に拡大し、加算率が上がった
- 上乗せの加算Ⅰロ・Ⅱロは、生産性向上の取組(⑱㉑必須で5以上)か社会福祉連携推進法人への所属と、基本給等への配分で取れる
- 相談支援に加算率5.1%の加算が新設された
- 要件の多くは令和9年3月末までの誓約で満たせるが、実績報告書で確認され、未実施なら返還の対象になる
個別の取扱いは、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)の案内とQ&Aで確かめてください。
参考資料
- 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(障障発0331第1号・こ支障第78号、令和8年3月31日)(福島県の掲載): https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/739427.pdf
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第53回 資料1「令和8年度の障害福祉人材の処遇改善等の対応」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001657650.pdf
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html
- 福島県「令和8年度障害福祉サービス等処遇改善加算」: https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21035c/08shogukaizenkasan.html


