就労継続支援B型の工賃規程は、生産活動で得たお金を、どの基準で、いつ、どう利用者に払うかを示すルールです。 国が定めた全国共通の様式はありませんが、基準省令と国の通知で決まっている点がいくつかあり、規程はそれと矛盾しないように作る必要があります。

中でも注意が要るのが能力給です。国の通知は、雇用契約を結ばないB型の利用者について「利用者の技能に応じて工賃の差別が設けられていないこと」を挙げています(就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について、平成18年10月2日障障発第1002003号)。この記事では、規程に書く項目と、時間給・出来高・能力給・評価の考え方を、基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)と国の通知にもとづいて整理します。平均工賃月額による報酬区分は令和6年度報酬改定と令和8年6月の見直しを前提にしています。


1. 工賃について決まっていること

決まっていること根拠
工賃は、生産活動の収入から生産活動に必要な経費を引いた額を払う基準省令 第201条
1人あたりの工賃の月額の平均は3,000円を下回ってはならない基準省令 第201条
工賃の水準を高めるよう努め、毎年度の目標水準と前年度の工賃の平均額を利用者に知らせ、都道府県に報告する基準省令 第201条
報酬(自立支援給付)を工賃の支払いに充ててはならない(災害などやむを得ない場合を除く)基準省令 第202条で準用する第192条
工賃とは、工賃・給与・手当・賞与など名称を問わず利用者に払うすべてのもの就労系の留意事項通知(工賃実績報告)
出欠・作業時間・作業量は利用者の自由。作業が終わらなくても減額などの制裁を課さない。支援は技術的指導に限る。技能に応じて工賃の差別を設けない労働者性の通知

平均工賃月額が3,000円を下回る事業所は、都道府県の重点的な指導監査の対象になります。また、和歌山県の集団指導の資料では、前年度の工賃実績と当年度の工賃目標を利用者に知らせていなかった事例が指導事例として挙げられています。規程に通知の手順を書いておくと、漏れを防げます。


2. 工賃規程に書く項目

項目書く内容
目的生産活動の成果を工賃として公平に分配すること
工賃の原資生産活動の収入から必要経費を引いた額を工賃に充てること。報酬は充てないこと
対象となる活動事業所内の作業、施設外就労、在宅での作業など、工賃の対象となる生産活動
計算の単位時間・日・作業量のどれを基準にするか、単価の決め方
端数と上限・下限1分・15分単位などの端数処理、時間の数え方(休憩の扱い)
賞与・手当年度末の精算や賞与の有無と計算方法(払う場合はすべて工賃に含まれる)
支払日と方法締め日、支払日、振込・手渡し、明細の交付
目標工賃と実績の通知毎年度の目標水準と前年度の実績を、いつ、どの方法で知らせるか
単価の見直し生産活動の収支を見て単価を見直す時期と手続き、利用者への説明
相談・苦情工賃について相談・苦情を受ける窓口と手順
施行日と改定の記録改定した日と内容

規程とは別に、利用者が読んで分かる説明資料(ふりがな、図や例を使ったもの)を用意し、利用開始時と単価を変えたときに説明します。


3. 時間給・出来高・能力給の考え方

計算の方式ごとの確かめる点

方式内容確かめる点
時間給・日給作業した時間や日数に単価を掛ける出欠・作業時間を利用者が選べることと両立する。休憩の扱いを決めておく
出来高作業した量に単価を掛ける作業量は利用者の自由。終わらなかった分への制裁(減額・作業の割当停止など)は課さない
時間給+出来高基本は時間、量に応じて上乗せ上乗せの基準が技能の評価になっていないか
能力給・技能給技能の評価で単価や等級に差を付ける通知の「技能に応じて工賃の差別が設けられていないこと」と関わる。導入前に指定権者に確認
均等割収益を人数や時間で均等に分ける分け方の基準(出席日数・時間)を明記する

時間や作業量に応じて払う方法は、作業した分への対価として説明できます。一方で、技能の高さそのものを評価して単価に差を付ける仕組みは、通知の文言と正面から関わります。現に能力給を採っている事業所は、評価の中身が技能の格付けになっていないか、指定権者がどう見ているかを確かめてください。

評価の使い方

評価は、工賃の差を付ける道具ではなく、支援の道具として使うのが基本です。

  • 作業の習熟度や得意な工程の把握は、個別支援計画の目標と支援内容に反映させる
  • 作業の割り振りを変えるときは、本人の希望と支援の必要にもとづいて決める
  • 遅刻・欠席・作業量の未達を評価の減点や工賃の減額に結び付けない
  • 評価の記録は、個別支援計画のモニタリングと同じ流れで残す

個別支援計画への書き方は「B型の個別支援計画の書き方」で整理しています。


4. 工賃規程を作る・見直す手順

  1. 生産活動の収支を分けて見る:生産活動の収入と必要経費を、報酬の収支と分けて月ごとに集計します。考え方は「就労継続支援B型の収支」で扱っています
  2. 工賃の原資を見込む:年間の生産活動の見込みから、工賃に充てられる額を出します
  3. 単価と計算方式を決める:見込みの原資と、利用者の延べ作業時間・量から単価を決めます。1人あたりの月額の平均が3,000円を下回らないことを確かめます
  4. 精算の方法を決める:見込みより黒字になった場合の賞与などの払い方、赤字になった場合の単価の見直し方を決めます
  5. 利用者に説明する:規程と説明資料を使って、利用開始時と改定時に説明し、記録を残します
  6. 毎年度の見直し:前年度の実績を集計して利用者に知らせ、目標水準を設定し、4月に都道府県へ工賃実績を報告します

平均工賃月額との関係

平均工賃月額は「前年度の工賃支払総額 ÷ 開所日1日あたりの平均利用者数 ÷ 12か月」で出し、この額で翌年度の基本報酬の区分が決まります。名称を問わず払ったものはすべて工賃に入るため、年度末の賞与も区分の計算に反映されます。区分と計算の詳細は「就労継続支援B型の報酬区分」を参照してください。

落とし穴

  • 報酬の収入から工賃を上乗せした:基準で原則として認められていません
  • 遅刻や欠席への減額・罰則を規程に書いていた:通知の制裁を課さない点と関わります
  • 能力の等級で単価を分けていたが、根拠を説明できない:指定権者に見解を確かめます
  • 目標工賃と前年度の実績を利用者に知らせていない:基準で求められている手順です
  • 規程を改定したが、利用者への説明の記録がない

5. まとめ

  • 工賃は生産活動の収入から必要経費を引いた額で払い、月額の平均は3,000円以上。報酬は原則として充てない
  • 工賃規程には、原資、計算の単位、賞与、支払日、目標工賃と実績の通知、見直し、相談窓口を書く
  • 時間や作業量に応じた支払いと、技能で差を付ける能力給は分けて考える。能力給は指定権者に確認する
  • 評価は工賃の差ではなく、個別支援計画と支援の改善に使う
  • 名称を問わず払ったものはすべて平均工賃月額に入り、翌年度の報酬区分に効く

工賃を中長期でどう上げるかは「経営・財務」の記事にまとめています。規程の内容や説明の方法は、所在地の都道府県・市の指導の内容によって求められることが違う場合があります。指定権者に確認してください。

参考資料