障害福祉の業務継続計画未策定減算は、感染症と自然災害の業務継続計画(BCP)のどちらか、または両方が作られていない場合、あるいは計画に従った措置を講じていない場合に、事業所の利用者全員の基本報酬を減らす減算です。 施設・居住系(施設入所支援・グループホームなど)は所定単位数の3%、通所・訪問・相談系(生活介護・就労継続支援・居宅介護など)は1%です。

期間は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月から、解消された月までです。運営指導で見つかった時点ではなく、事実が生じた時点にさかのぼって減算されるため、未策定の期間が長いほど返還の額が大きくなります。

この記事では、厚生労働省の留意事項通知(障発第1031001号)、基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2、解釈通知(障発第1206001号)、令和6年度報酬改定のQ&Aにもとづき、この減算の要件と計画の作り方を整理します。年度の根拠は、令和6年度報酬改定・令和8年6月の見直しにもとづいており、令和8年度の改定で減算の割合は変わっていません。ほかの減算との比較は障害福祉の減算一覧にまとめています。


1. 対象・割合・期間

項目内容
対象すべての障害福祉サービス
3%の対象療養介護、施設入所支援、宿泊型自立訓練、共同生活援助、指定障害者支援施設が行う生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援
1%の対象居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、自立生活援助、短期入所、重度障害者等包括支援、自立訓練(宿泊型を除く)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援(支援施設が行うものを除く)
期間事実が生じた月の翌月(生じた日が月の初日ならその月)から、解消された月まで
対象の利用者事業所の利用者全員

障害児の分野でも同じ減算があり、令和6年度報酬改定の概要では、障害児入所施設が3%、児童発達支援・放課後等デイサービス・障害児相談支援などが1%の対象とされています。

所定単位数の考え方

留意事項通知は、所定単位数を「報酬算定構造表でこの減算より左に書かれている加算を除き、各種加算を加える前の単位数」としています。加算を含めた合計に3%・1%を掛けるのではありません。ほかの減算にも当たる場合は、その減算をした後の基本報酬に割合を掛けます。

金額の目安

例えば、B型で利用者1人1日の基本報酬が600単位、利用者20人、月22日開所の事業所なら、1%の減算は1日6単位×20人×22日=月2,640単位です。1単位10円で計算すると約2.6万円ですが、実際の単価は地域区分で変わります。未策定の期間が1年に及べば、その12か月分がまとめて返還の対象になります。


2. 減算になる場合・ならない場合

厚生労働省のQ&A(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1、問14)は、次のように整理しています。

状態減算
感染症のBCPが無い対象
自然災害のBCPが無い対象
両方とも無い対象
計画はあるが、計画に従った措置を講じていない対象
計画はあるが、職員への周知・研修・訓練・見直しをしていない減算の要件ではない(ただし基準違反として指導の対象)

「計画に従った措置」とは、計画に書いた体制・備蓄・連絡網などを実際に整えていることです。計画に「3日分の水と食料を備蓄する」と書いて備蓄が無ければ、計画があっても措置を講じていないと見られるおそれがあります。

さかのぼりの扱い

Q&Aの問15は、減算は運営指導などで見つかった時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点にさかのぼって適用するとしています。例として、生活介護の事業所で令和6年10月の運営指導で未策定が分かり、感染症の予防の指針と非常災害の計画も無かった場合は、令和6年4月分から減算するとされています。

経過措置は終わっている

令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延防止のための指針と、非常災害に関する具体的計画を作っていれば、BCPが無くても減算しない経過措置がありました。訪問系・自立生活援助・就労定着支援・相談系は、同じ日まで減算そのものを適用しない扱いでした。この経過措置は終わっており、いまは計画が無ければ減算の対象です。 就労選択支援だけは、令和9年3月31日まで適用しないとされています。


3. 基準が求めること

基準省令第33条の2(各サービスが準用)は、事業者に次のことを求めています。

  1. 感染症や非常災害の発生時に、利用者へのサービス提供を継続し、早期に再開するための計画(業務継続計画)を策定し、計画に従って必要な措置を講じる
  2. 職員に計画を周知し、必要な研修と訓練を定期的に行う
  3. 定期的に計画を見直し、必要に応じて変更する

解釈通知は、研修を年1回以上(新規採用時には別に行うのが望ましい)、訓練(シミュレーション)を年1回以上行い、研修の実施内容は記録するとしています。訓練は机上の訓練と実地の訓練を組み合わせながら行うのが適切とされ、感染症の研修・訓練と一体で行ってもよいとされています。


4. 計画に入れる項目

解釈通知は、計画に書く項目を次のように例示しています。

計画入れる項目
感染症平時からの備え(体制の構築・整備、感染症の防止に向けた取組、備蓄品の確保など)/初動対応/感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有など)
自然災害平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道などが止まった場合の対策、必要品の備蓄など)/緊急時の対応(業務継続計画の発動基準、対応体制など)/他の施設や地域との連携

作るときは、厚生労働省の「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」と「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照します。自然災害のガイドラインのページには、ひな形(Word形式)と作成を支援する研修動画も掲載されています。

感染症と災害の計画は一体的に作ってもよく、他の事業者と連携して作ることも認められています。


5. 作る手順

  1. ひな形を手元に用意する:厚生労働省のガイドラインのページから、自然災害のひな形と感染症のガイドラインを取り寄せます
  2. 事業所の前提を書き出す:建物の場所と、ハザードマップで確かめた浸水・土砂災害などの想定、利用者の人数と医療的な配慮が必要な人、職員の通勤の手段と距離を整理します
  3. 優先する業務を決める:職員が半分に減った場合に続ける業務と止める業務を決めます。グループホームなら食事・服薬・安否確認、B型なら利用者の安否確認と作業の休止の判断などが中心になります
  4. 体制と連絡網を決める:発動の判断をする人、その人が不在の場合の代わり、職員・利用者・家族・相談支援事業所・指定権者への連絡の順番を決めます
  5. 備蓄と設備の対策を整える:計画に書いた備蓄を実際にそろえ、置き場と点検の担当を決めます。ここを整えないと「措置を講じていない」になります
  6. 職員に周知し、研修と訓練を行う:年1回以上の研修と訓練を計画に組み込み、実施した記録を残します
  7. 見直しの時期を決める:訓練の結果、職員や利用者の入れ替わり、ハザードマップの更新に合わせて見直します

チェックリスト

  • 感染症のBCPがある
  • 自然災害のBCPがある(一体型でもよい)
  • 計画に書いた備蓄・連絡網・体制が実際にそろっている
  • 職員に計画を周知した記録がある
  • 研修を年1回以上行い、記録している
  • 訓練を年1回以上行い、記録している
  • 最後に見直した日と、見直しの予定が分かる
  • 事業所ごとの被害の想定と利用者の情報が入っている

6. 落とし穴

  • 片方だけ作って安心する:感染症の計画だけ、災害の計画だけでは減算の対象です。Q&Aは、どちらか一方でも無ければ減算としています
  • ひな形の例示を消さずに残す:ひな形の例示のままで、事業所の職員名や備蓄が入っていない計画は、事業所の計画として説明できません
  • 書いた措置を実行していない:計画は、書いた内容を整えて初めて意味を持ちます。書いた備蓄の量と実際の量を年1回照らし合わせます
  • 研修・訓練を記録しない:減算の要件ではなくても、基準で求められています。運営指導の前に慌てて作るのではなく、実施のたびに記録を残します。運営指導でよく確かめられる項目は運営指導の自己点検チェックリストで整理しています
  • ほかの体制の減算と混同する:身体拘束や虐待防止の体制の不備にも別の減算があります。虐待防止の委員会・指針・研修の要件は虐待防止の取組で確かめてください

同じく令和6年度改定で新設され、利用者全員にかかる減算に情報公表未報告減算があります。あわせて確かめておくと安心です。


7. まとめ

  • 業務継続計画未策定減算は、感染症・自然災害のBCPのどちらかが無い、または計画に従った措置を講じていない場合に、利用者全員にかかる
  • 施設・居住系は3%、通所・訪問・相談系は1%。基本報酬(加算の前)に掛ける
  • 期間は事実が生じた翌月から解消月まで。見つかった時点ではなく、事実が生じた時点にさかのぼる
  • 経過措置は令和7年3月31日で終わっている(就労選択支援は令和9年3月31日まで適用しない)
  • 研修・訓練は年1回以上。減算の要件ではないが、基準で求められている

参考資料

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基本相談支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号)新旧対照表: https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2: https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(障発第1206001号、令和7年3月31日一部改正): https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf
  • 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日): https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf
  • 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001204019.pdf
  • 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17517.html