強度行動障害支援者養成研修は、強度行動障害のある人を支援する職員を育てるための研修で、基礎研修と実践研修の2段階です。 どちらも国の標準カリキュラムは12時間で、都道府県または都道府県知事が指定した研修事業者が実施します。令和6年度の報酬改定からは、その上に中核的人材養成研修が加わりました。
多くの加算が、この研修の修了者の配置や、修了者が作った支援計画シートにもとづく支援を要件にしています。加算を取れるかどうかは、研修を受けた職員が何人いて、どの段階まで修了しているかで決まります。 この記事では、厚生労働省の運営要領と令和6年度の改定の概要にもとづいて、研修の中身と、加算ごとに求められる修了者を整理します。
1. 研修の3つの段階
| 段階 | 目的(運営要領などから) | 標準の時間 | 受講の対象(主なもの) |
|---|---|---|---|
| 基礎研修 | 強度行動障害のある人に適切な支援を行う職員の育成 | 12時間(講義6.5・演習5.5) | 障害福祉サービス事業所等で、知的障害・精神障害のある児者の支援に従事している人、従事する予定の人 |
| 実践研修 | 適切な支援計画を作れる職員の育成 | 12時間(講義3.5・演習8.5) | 基礎研修の修了者で、上と同じ業務に従事している人など |
| 中核的人材養成研修 | 事業所でチーム支援をマネジメントする中心の人材の育成 | 研修の実施機関が定める | 令和6年度は、都道府県が推薦した実践研修の修了者など |
基礎研修と実践研修の対象には、連携する医療機関の医療従事者や、連携して強度行動障害のある児童生徒を支援する特別支援学校の教師なども含まれます。
基礎研修の中身
講義で、強度行動障害の状態や行動障害が起きる理由、障害特性の理解、虐待防止との関係、家族の気持ち、チームで支援する必要性を学びます。演習では、行動を見る視点、支援手順書にもとづく支援の体験、特性の把握と適切な対応を扱います。
実践研修の中身
講義で、支援を組み立てる基本と組織的なアプローチを学び、演習の比重が大きくなります。アセスメントの方法、アセスメントにもとづく支援手順書の作成、記録の分析と手順書の修正、医療機関など関係機関との連携が中心です。加算の要件に出てくる「支援計画シート等の作成」は、この研修で学ぶ内容と重なります。
修了までの期間
運営要領は、基礎研修は原則1か月以内(やむを得ない場合は2か月以内)、実践研修は原則2か月以内(同じく4か月以内)に修了するとしています。研修の時間帯や曜日は、都道府県が受講しやすいよう配慮することになっています。
中核的人材養成研修
令和6年2月7日の国の事務連絡は、次のように示しています。
- 令和6年度から、全ての都道府県を対象に実施する(令和5年度はモデル実施)
- 都道府県で実施する体制が整うまでは、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が実施する研修をこの研修と位置づける
- 令和6年度は、全都道府県から2名ずつ、計94名程度の推薦を受け付ける予定
- 推薦にあたっては、実践研修の修了者であること、支援の実績、地域の支援体制づくりでの役割期待を踏まえる
受講の枠はまだ限られています。自事業所の職員を受講させたい場合は、早めに都道府県の担当課に推薦の時期と条件を確かめる必要があります。
2. 加算ごとに求められる修了者
令和6年度の改定では、行動関連項目の合計点が10点以上という区切りに加えて、18点以上(障害児は児基準30点以上)の人を受け入れ、中核的人材を置いて支援する体制を評価する仕組みが加わりました。主な加算と、求められる研修の修了者は次のとおりです。
| サービス | 加算 | 求められる修了者(概要) |
|---|---|---|
| 生活介護・施設入所支援 | 重度障害者支援加算(Ⅱ)(Ⅲ) | 生活支援員の20%以上を基礎研修修了者とし、実践研修修了者が作った支援計画シート等にもとづいて個別支援する。18点以上の人は、中核的人材養成研修の修了者が作ったシート等にもとづくと上乗せ |
| 短期入所 | 重度障害者支援加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 実践研修修了者が作ったシート等にもとづき、基礎研修修了者が支援すると上乗せ。18点以上で中核的人材の上乗せ |
| 共同生活援助 | 重度障害者支援加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 生活支援員の20%以上を基礎研修修了者とし、実践研修修了者が作ったシート等にもとづいて支援する |
| 放課後等デイサービス・児童発達支援 | 強度行動障害児支援加算 | 実践研修修了者を配置し、基礎研修または実践研修の修了者が支援する。放デイ(Ⅱ)は中核的人材養成研修の修了者も配置 |
| 計画相談支援・障害児相談支援 | 行動障害支援体制加算(Ⅰ)60単位/月・(Ⅱ)30単位/月 | 実践研修を修了した相談支援専門員を配置し、その旨を公表する。(Ⅰ)は、その専門員が強度行動障害児者の計画相談を現に行っている場合 |
| 行動援護 | 特定事業所加算 | 「良質な人材の確保」の選択肢に、中核的人材養成研修を修了したサービス提供責任者が1人以上いることが加わった |
加算の単位数と細かい要件は、サービスごとの記事で扱っています。生活介護は「生活介護の加算一覧」、放デイ・児発は「強度行動障害児支援加算の算定要件」を参照してください。
集中的支援加算と広域的支援人材
状態が悪化した強度行動障害のある児者に対して、広域的支援人材が事業所を集中的に訪問して支援する場合の集中的支援加算も、令和6年度に新設されました((Ⅰ)1回1,000単位、3か月以内・月4回まで)。国の事務連絡は、広域的支援人材養成研修を実施するまでの間は、発達障害者地域支援マネジャーや中核的人材養成研修の講師などの一定の要件を満たす人を広域的支援人材として扱うとしています。
行動援護・重度訪問介護との関係
運営要領は、重度訪問介護従業者養成研修の行動障害支援課程は基礎研修と、行動援護従業者養成研修課程は基礎研修・実践研修と内容が重なるため、合同で開催できるとしています。行動援護の従業者やサービス提供責任者の要件にもこれらの研修が関わるので、訪問系の事業所は指定権者の案内で要件を確かめてください。
3. 研修の受けさせ方
- 利用者の状態から必要な段階を決める:行動関連項目10点以上の人を受け入れるなら、基礎研修と実践研修の修了者が要ります。18点以上(児は30点以上)の人を受け入れ、上乗せの評価を受けるなら、中核的人材養成研修の修了者も要ります。
- 人数の目標を置く:生活介護やグループホームでは、生活支援員の20%以上を基礎研修修了者にする要件があります。常勤換算ではなく人数の割合で求める要件は、職員の入れ替わりで割り込みやすいので、要件ぎりぎりではなく余裕を持たせます。
- 実践研修の修了者を複数育てる:支援計画シートを作る人が1人だけだと、その人の退職や休職で加算が止まります。
- 年間の研修計画に入れる:都道府県の研修は年に数回で、定員があります。受講の申込みの時期を一覧にし、年度の初めに受講者を決めます。
- 修了証の写しを保管する:加算の届出と運営指導で、修了者の配置を示す書類になります。
落とし穴
- 基礎研修の修了者が退職し、生活支援員の20%を下回っていたのに届出を直していない
- 支援計画シートを作ったのが実践研修の修了者ではなかった
- 修了証を本人だけが持っていて、事業所に写しがない
- 中核的人材養成研修の受講を思い立ったときには、その年度の推薦が締め切られていた
チェックリスト
- 職員ごとに、基礎研修・実践研修・中核的人材養成研修の修了状況を一覧にした
- 加算の要件(修了者の人数・割合)を満たしているかを毎月確かめている
- 実践研修の修了者を2人以上にする計画がある
- 都道府県の研修の日程と申込みの時期を、年度の初めに確かめている
- 修了証の写しを保管し、届出の書類と照らしている
処遇改善加算のキャリアパス要件で研修の計画を立てる場合は、この研修を資質向上の計画に組み込むこともできます。「障害福祉のキャリアパス要件」と「介護・福祉の人材育成計画」を参照してください。
4. まとめ
- 強度行動障害支援者養成研修は、基礎研修と実践研修の2段階で、それぞれ標準12時間。実践研修は基礎研修の修了が前提
- 実施するのは都道府県または指定研修事業者。修了までは基礎が原則1か月、実践が原則2か月以内
- 令和6年度から中核的人材養成研修が加わり、行動関連項目18点以上(児基準30点以上)の人への支援で評価される
- 生活介護・短期入所・グループホーム・放デイ・児発・相談支援・行動援護の加算が、修了者の配置や修了者が作った支援計画シートを要件にしている
- 修了者の人数と割合を一覧で管理し、複数人を育てておく
研修の日程・定員・受講の手続きは、都道府県ごとに違います。所在地の都道府県の案内で確かめてください。
参考資料
- 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部長通知「強度行動障害支援者養成研修事業の実施について(運営要領)」(平成29年8月3日障発0803第1号、令和5年4月28日一部改正): https://www.mhlw.go.jp/content/001270358.pdf
- 厚生労働省・こども家庭庁 事務連絡「中核的人材養成研修の実施予定について」(令和6年2月7日): https://www.mhlw.go.jp/content/001270356.pdf
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001204019.pdf
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日): https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf

