「求人を出しても、そもそも応募が来ない」
「面接に来ても辞退される、あるいは採用してもすぐに辞めてしまう」
「慢性的な人手不足で、現場も管理者も疲弊しきっている」
介護・福祉事業所の経営者様から、このような悲鳴にも似た相談を毎日のように受けます。人材の確保は、もはや事業継続における「最大の経営課題」と言っても過言ではありません。
しかし、ここで厳しい現実をお伝えしなければなりません。
「人口減少社会だから仕方がない」「業界全体が不人気だから」と嘆いているだけでは、あなたの事業所は間違いなく淘汰されます。
実は、採用に成功している一部の事業所は、採用活動を単なる「空き枠補充」ではなく、「マーケティング(市場から選ばれるための戦略)」として捉えています。彼らは、利用者を集めるのと同じ熱量で、求職者を集めるための「仕掛け」を行っているのです。
この記事では、福祉業界の経営カイゼンを専門とする編集部が、精神論ではない「ロジカルな採用・定着のノウハウ」を徹底解説します。求人票の書き方から、意外と見落とされている「Googleマップ(口コミ)」が採用に与える影響まで、明日から使える実践知をお届けします。
なぜ「集まらない」のか? 令和の介護採用市場をデータで直視する
まずは敵を知り、己を知ることです。なぜ採用がうまくいかないのか、その背景には「数値的な現実」と「求職者の行動変容」があります。
1. 有効求人倍率の現実と「売り手市場」の加速
厚生労働省のデータ(一般職業紹介状況)によると、介護サービスの職業における有効求人倍率は、全産業平均を大きく上回り、常に3〜4倍前後で推移しています。これは、求職者1人に対して3〜4件の求人が殺到している計算です。
つまり、求職者は「仕事を選び放題」の状態。「雇ってやる」というスタンスの事業所は、土俵にすら上がれていません。
2. 求職者の「検索行動」が変わった
かつてはハローワークの紙の求人票が全てでした。しかし現在は、求職者(特に20〜40代)は以下のような行動をとります。
- 求人サイトやハローワークで条件を見る。
- 気になった事業所名をGoogleで検索する。
- 公式サイトやSNS、そしてGoogleマップの「口コミ」を確認する。
- 「雰囲気が良さそう」「評判が悪くない」と確信して初めて応募する。
このプロセスにおいて、Web上に情報がなかったり、ネガティブな情報が放置されていたりすれば、その時点で候補から外れます。これが「応募が来ない」見えない原因の正体です。
【STEP1:魅力設計】「給与」以外で勝負するEVP(従業員価値提案)
「うちは給与が高くないから人が来ない」と諦めていませんか? もちろん処遇改善は重要ですが、求職者が求めているのは金銭だけではありません。これをマーケティング用語でEVP(Employee Value Proposition:従業員への価値提案)と呼びます。
ターゲット(ペルソナ)を絞り、刺さる魅力を定義する
「誰でもいいから来てほしい」という求人は、誰にも刺さりません。ターゲット:子育て世代の主婦(主夫)
* EVP: 「急な発熱でも休みやすい相互扶助の文化」「残業ゼロの徹底」「学校行事優先OK」
ターゲット:キャリアアップ志向の若手
* EVP: 「資格取得費用の全額補助」「3年で管理者を目指せる明確なキャリアパス」「最新のICT機器導入による業務効率化」
ターゲット:ブランクありのベテラン層
* EVP: 「体力的な負担が少ない人員配置」「最新技術へのフォロー体制」「経験を評価する給与体系」
自社の強みを棚卸しし、「誰にとっての理想の職場か」を言語化してください。
【STEP2:求人票改善】クリックされる求人原稿の書き方【OK/NG例文】
魅力が定まったら、それを求人票(ハローワーク、Indeed、自社サイト等)に落とし込みます。ポイントは「具体性(数字とエピソード)」と「不安の払拭」です。
【NG例 👎】よくある「思考停止」な求人票
アットホームな職場です!
未経験歓迎、研修制度あり
やる気のある方募集
仕事内容:介護業務全般
これでは、職場の実態が全く伝わらず、求職者は不安を感じてスルーします。
【OK例 👍】情景が浮かび、応募したくなる求人票
■職場の雰囲気(アットホームの具体化)
「20代〜50代まで幅広い世代が活躍中。休憩室では昨日のドラマの話で盛り上がるような、フラットな関係性が自慢です。月1回の1on1面談を実施しており、人間関係の悩みも早期に解消できる風通しの良さがあります。」
■研修制度(未経験の不安払拭)
「入職後、いきなり現場に放り出すことはありません。最初の1ヶ月は『プリセプター制度』により、専属の先輩職員がマンツーマンで指導。マニュアルも動画化されており、スマホでいつでも復習可能です。」
■仕事内容(1日の流れを可視化)
【デイサービス勤務の1日例】
08:30 出勤・送迎準備(タブレットでルート確認)
09:00 送迎開始
10:00 入浴介助・機能訓練補助
12:00 昼食(見守り・一部介助)
13:00 スタッフ休憩(しっかり1時間確保)
14:00 レクリエーション
16:00 送迎開始
17:00 記録入力(音声入力ソフト導入済み)
17:30 退勤(先月の平均残業時間は月3時間です)
このように「自分がそこで働いている姿」を想像させる記述が、応募ボタンを押す最後の一押しになります。
【STEP3:チャネル戦略】ハローワーク+αの「Web活用」が勝敗を分ける
求人票ができたら、どこに出すかです。ハローワークだけでは不十分ですが、高い掲載費を払って大手媒体に出すだけでも埋もれてしまいます。
1. 自社採用サイト(オウンドメディア)の整備
IndeedやGoogleしごと検索は、自社の採用ページを読み込みます。スマホ対応した見やすい採用ページがあるだけで、流入数は劇的に変わります。ブログで「スタッフの日常」を発信するのも効果的です。
2. 実は超重要!「Googleマップ(MEO)」の対策
ここが多くの事業所が見落としているポイントです。
求職者は「自宅からの距離」を重視するため、必ずGoogleマップで事業所を検索します。その際、以下のような状態になっていませんか?口コミが星1つで放置されている(利用者家族からのクレームなど)
写真が外観の暗い写真1枚しかない
情報が更新されていない
Googleマップの口コミは、利用者だけでなく求職者も見ています。
「職員の対応が悪い」という口コミがあれば、「教育体制が悪いのでは?」「ギスギスしているのでは?」と勘ぐられます。逆に、良い口コミが多く、明るい写真が掲載されていれば、それだけで信頼度が上がり、応募率は向上します。
これはMEO(Map Engine Optimization)と呼ばれる施策ですが、集客だけでなく採用においても極めて強力な武器になります。
【STEP4:定着(リテンション)】「採用して終わり」が一番の赤字要因
採用にかかるコスト(広告費、面接工数、教育コスト)を考えると、早期離職は経営にとって大打撃です。一般的に、職員1人が早期離職すると、年収の30%〜50%相当の損失が出ると言われています。
定着率を高める「オンボーディング」と「IT化」
オンボーディング(受け入れ体制): 入職初日のウェルカムランチ、3ヶ月間のロードマップ提示など、「歓迎されている」「成長できる」と実感させる仕組みを用意しましょう。
IT・ICT化による負担軽減: 手書きの記録、FAX連絡、多すぎる会議…。これらは若手職員が最も嫌う「非効率」の象徴です。介護ソフトやチャットツールの導入は、業務効率化だけでなく「働きやすい職場」という強力な採用ブランディングになります。
採用難を解決する究極の「広報戦略」とは
ここまで採用と定着のコツをお伝えしましたが、根本的な解決策は「事業所の認知度(ブランド力)」を高めることに尽きます。
「地域で評判の良い施設」には、利用者も集まりますが、自然と「ここで働きたい」という人も集まります。つまり、「集客(利用者獲得)」と「採用(人材獲得)」は表裏一体であり、どちらも「Webでの適切な情報発信」が鍵を握っているのです。 自社の強みを明確にする。
WebサイトやGoogleマップで正しく情報を届ける。
地域での露出を増やす。
このサイクルを回すことが、採用コストを下げ、質の高い人材を安定的に確保する唯一の道です。
「認知」を広げ、採用と集客の好循環を作るために
もし、あなたが「Webでの情報発信に手が回らない」「自社の魅力をどう伝えていいかわからない」とお悩みなら、まずは福祉業界に特化したプラットフォームを活用するのも一つの手です。
例えば、当メディアが運営する「Findcare.jp」のような検索サイトに情報を掲載することは、利用者へのアピールになるだけでなく、求職者があなたの事業所を見つけるきっかけ(SEO/MEO効果)にもなります。
まとめ:採用活動は「経営者のメッセージ」そのもの
採用の悪循環を断ち切るためのポイントを整理します。
- マーケティング視点を持つ: ターゲットを絞り、EVP(働く魅力)を言語化する。
- 求人票を具体化する: 数字とエピソードで「働くイメージ」を持たせる。
- Web上の評判(MEO)を整える: Googleマップの口コミ対策は採用にも直結する。
- 定着の仕組みを作る: IT化などで「働きやすさ」を追求し、離職コストを下げる。
「人が来ない」と嘆く前に、まずは求人票の1行、Googleマップの写真1枚から変えてみてください。その小さな変化が、未来の優秀なスタッフとの出会いを変えるはずです。
