放課後等デイサービスや児童発達支援事業所の経営において、利益率を大きく左右するのが「稼働率」の維持です。しかし、現場では毎日のように「急なキャンセル」が発生します。
「スタッフを配置し、おやつの準備もしていたのに、当日の朝に欠席連絡が入った」
「月初の予定では満床だったが、風邪の流行でキャンセルが続き、売上が見込みより大幅に下がってしまった」
こうした事態による逸失利益を最小限に抑えるためのセーフティネットが「欠席時対応加算」です。
しかし、多くの事業所が「ただ休んだら請求できる」「電話さえすればいい」と安易に考えており、実地指導(指導監査)で記録不備を指摘され、返還を求められるケースが後を絶ちません。また、経営的には「加算を取るべきか、振替を優先すべきか」の判断も重要です。
本記事では、欠席時対応加算の厳格な算定要件から、現場が迷う「振替」との損益比較、そして実地指導をクリアするための具体的な記録ノウハウまで、経営視点で徹底解説します。
1. 欠席時対応加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の基本と金額感
まずは、この加算が経営にどの程度のインパクトをもたらすのか、数字で把握しましょう。
単位数と金額換算
放課後等デイサービス・児童発達支援における単位数は以下の通りです。
| 区分 | 単位数(1回につき) | 金額目安(10円/単位の場合) | 適用ケース |
|---|---|---|---|
| 欠席時対応加算(Ⅰ) | 94単位 | 約940円 | 通常の運営状態 |
| 欠席時対応加算(Ⅱ) | 75単位 | 約750円 | 定員超過・人員欠如減算が適用中の月 |
| ※(Ⅱ)は(Ⅰ)の80%として算定されます。 |
【経営視点でのポイント】
通常の基本報酬が約600単位(約6,000円)だとすると、欠席時対応加算で補填できるのはその約15%程度に過ぎません。「加算があるから大丈夫」ではなく、「あくまで最小限の補填」であることを認識する必要があります。
算定回数の上限
一人の利用者につき、月4回まで算定可能です。
もし月4回以上の急なキャンセルが続く場合は、加算の算定云々よりも、保護者との面談を行い、利用計画自体の見直し(曜日変更や回数調整)を行うべきでしょう。
2. 【実地指導対策】確実に算定するための3つの要件
「欠席時対応加算」は自動的に付与されるものではありません。以下の3要件をすべて満たし、かつ証拠(エビデンス)を残す必要があります。
① 急な欠席であること(連絡のタイミング)
利用予定日の「前々日、前日、または当日」に、利用者(保護者)から利用中止の連絡があった場合が対象です。対象となる例: 利用予定日が金曜日の場合、水曜日・木曜日・金曜日の連絡。
対象外の例: 火曜日以前に連絡があった場合。
3日以上前のキャンセルは「シフト調整や他利用者の受け入れが可能」とみなされ、加算対象外となります。
② 相談援助を行うこと(最重要)
ここが実地指導で最も指摘されるポイントです。
単に「欠席ですね、わかりました」と電話を切るだけでは要件を満たしません。事業所側から相談援助を行い、記録することが必須です。
【相談援助として認められる対応例】
利用者の体調や病状の確認、家庭でのケア方法への助言。
次回利用日の調整や確認。
最近の様子についてのヒアリングや、困りごとの相談。
※メールやLINEでの連絡のみで完結し、双方向のやり取り(相談援助)の実態がない場合は、算定が認められないケースがあります。必ず電話等で直接的なやり取りを行うか、テキストベースでも相談援助の実態が残るようにしてください。
③ 当日の通所実績がないこと
当然ですが、その日にサービス提供を行っていないことが前提です。
注意点として、体調不良で学校を早退し、事業所に来所して短時間でもサービスを受けた場合は「基本報酬」の算定となります(欠席時対応加算は算定不可)。
3. 経営判断:「振替利用」と「欠席時対応加算」の損益分岐
現場からよく挙がる質問が「キャンセルを受けて別日に振替利用した場合、加算はどうなるのか?」です。これは明確なルールと、経営的な「損得」が存在します。
同月内に振替利用した場合
原則として「同月内に振替利用を行った場合、欠席時対応加算は算定できない」とされています。
【経営シミュレーション】
A:欠席時対応加算のみ算定
* 売上:940円(加算分)
* 損失:-5,060円(本来の報酬6,000円との差額)
B:同月内に振替実施
* 売上:6,000円(振替日の基本報酬)
* 加算:0円(算定不可)
* 結果:満額回収
経営的には、明らかに「B:振替実施」が正解です。欠席時対応加算はあくまで「振替ができなかった時の保険」として捉え、最優先は振替の提案を行うフローを構築してください。
翌月以降に振替した場合
ここが判断の分かれ目です。一般的に、欠席の事実は当月に確定しているため、以下の処理が可能です。当月: 欠席時対応加算(94単位)を算定
翌月: 振替利用日に基本報酬を算定
これにより、当月の売上減少を抑えつつ、翌月の売上を作ることができます。ただし、自治体(指定権者)によっては「振替を前提とするなら加算は不可」とするローカルルールが存在する場合があるため、必ず確認してください。
4. 返戻を防ぐ「鉄壁の記録」マニュアル
「やったつもり」が一番危険です。実地指導員は記録を見て判断します。以下のテンプレートを活用し、記録漏れを防いでください。
ステップ1:重要事項説明書での同意
入会時に必ず説明し、同意を得ておきます。
「急なキャンセルの場合、欠席時対応加算(約940円の1割負担等)が発生します」
「ただし、相談援助等の対応をさせていただきます」
これを伝えておかないと、請求書を見た保護者から「休んだのになぜお金がかかるのか」というクレームに直結します。
ステップ2:サービス提供実績記録票への記載
日付・曜日: 記入
サービス提供の状況: 「欠席時対応加算」等のコード、または備考欄に明記
確認印: 基本的に不要なケースが多いですが、自治体のルールに従う
ステップ3:業務日報・支援記録への詳細記載(証拠)
ここが運命の分かれ道です。以下の要素を必ず網羅してください。
【欠席時対応加算 記録テンプレート】
日時: 202X年〇月〇日 9:15(電話)
対応者: 児童指導員 〇〇
相手方: 母
欠席理由: 本人発熱(38.2℃)のため学校を欠席。
相談援助内容:
母よりキャンセルの連絡あり。発熱以外の症状(咳・鼻水)の有無を確認し、水分補給と安静を促すよう助言。母より「最近疲れが溜まっていたようだ」との話があったため、家庭での睡眠時間の確保について共有。
次回利用予定(〇月〇日)に変更がないか確認し、体調回復後の来所をお待ちしている旨を伝え終了。
NG例: 「母より欠席連絡あり。了承。」
(これでは相談援助を行った証拠にならず、返戻対象になります)
5. まとめと「カイゼン」の視点
放課後等デイサービスの「欠席時対応加算」について解説しました。算定要件: 前々日〜当日の連絡に対し、必ず「相談援助」を行い記録する。
金額感: 1回約940円(94単位)。基本報酬の約1/6程度。
経営戦略: 「加算算定」よりも「同月内振替」の方が圧倒的に収益性が高い。振替を第一優先にする。
リスク管理: 重要事項説明書での事前同意と、詳細な記録が必須。
加算管理から「選ばれる事業所」へ
欠席時対応加算は、あくまで「守り」の施策です。
経営を安定させる本質的な解決策は、キャンセルが出てもすぐに埋まるほどの「高い稼働率」と、それを支える「集客力」です。
もし現在、キャンセルの穴埋めに苦労していたり、定員割れが続いているようであれば、加算の細かい計算よりも先に、Web集客やGoogleマップ(MEO)対策による「認知拡大」が必要かもしれません。
正確な請求業務で足元を固めつつ、地域で一番に選ばれる事業所づくりを目指しましょう。
