居宅介護や放課後等デイサービス、就労継続支援などの障害福祉サービスを経営する中で、最も大きな経営課題の一つが「利用者様の獲得(集客・稼働率向上)」です。
この業界において、集客の生命線を握るのが地域の「相談支援事業所」との連携であることは間違いありません。

しかし、現場の経営者様からは以下のような悲鳴にも似た相談が絶えません。
「営業に行っても、忙しそうで相手にされない」
「パンフレットを置いてもらっても、一向に紹介が来ない」
「そもそも、何を話せばいいのかわからず、足が遠のいてしまう」

結論から申し上げますと、紹介が来ないのは「相談支援専門員(以下、相談員)の業務プロセス」を理解せず、単なる「売り込み」をしてしまっているからです。

この記事では、福祉経営のプロフェッショナルな視点から、相談員に「頼られる」ための具体的な営業アプローチと、足を使わずとも相談員に見つけてもらうための「仕組み(Web集客・MEO)」のカイゼン手法を徹底解説します。


障害福祉の集客構造:なぜ「相談支援事業所」がハブなのか

まずは敵を知り己を知ることです。なぜ相談支援事業所へのアプローチが最重要なのか、その構造と相手の状況を正しく理解しましょう。

制度上の「ゲートキーパー」である

障害福祉サービスを利用するためには、原則として「サービス等利用計画」の作成が必要です。この計画を作成し、支給決定後のモニタリングを行うのが相談支援専門員です。
利用者様やご家族にとって、彼らは最も身近な専門職であり、サービス選びの決定権に大きな影響力を持つ「ゲートキーパー(門番)」です。

どれほど質の高い療育やケアを提供していても、このゲートキーパーの「手持ちのカード(事業所リスト)」に入っていなければ、選択肢のテーブルに乗ることすらできません。

相談員は「超多忙」であるという事実

ここが最も重要なポイントです。相談支援専門員の業務量は膨大です。
1人で30〜40件以上のケースを担当することも珍しくなく、日中はモニタリングや担当者会議で外出、夕方以降は計画案の作成や事務処理に追われています。

そんな状況で、アポイントもなく訪問し、「うちの事業所はこんなに素晴らしいんです!」と一方的に長話をする営業マンが来たらどう思うでしょうか?
「連携相手」ではなく「時間を奪う相手」と認識されてしまいます。営業活動とは、相手の時間を尊重した上で行われるべきものです。

門前払いを防ぐ!「選ばれる」ための準備とマインドセット

「お願いします」と頭を下げる営業は今日で終わりにしましょう。目指すべきは、相談員から「相談したい」と思われるパートナー(社会資源)としてのポジションです。

1. 「強み」をスペックとして言語化する

「アットホームな雰囲気です」「一人ひとりに寄り添います」といった抽象的なアピールは、相談員の実務においては役に立ちません。彼らが計画案を作成する際に必要なのは、マッチングのための「スペック情報」です。

以下のような情報を具体的に整理し、A4用紙1枚にまとめましょう。受入体制(医療・行動面): 医療的ケア児(喀痰吸引、経管栄養など)、強度行動障害、重症心身障害児の対応可否。
専門職の配置: PT・OT・ST、公認心理師、看護師などの常勤・非常勤状況。
送迎の具体的範囲: 「◯◯市全域」ではなく、「片道20分圏内」「◯◯学校へのお迎え可」など。
加算取得状況: 専門的支援加算や児童指導員等加配加算など、体制の厚さの証明。

2. チラシ・パンフレットは「保存版」を目指す

美しいデザインよりも、「ファイルに閉じておいて、必要な時にパッと見返せる」資料が好まれます。
特に重要なのが「最新の空き状況」です。NG例: 綺麗な写真ばかりで、肝心の定員や空き枠がわからない。
OK例: 「月・水・金に各2名の空きあり(◯月◯日現在)」と明記された別紙(FAX送付状など)を挟む。

相談員が一番困っているのは、「今すぐサービスが必要な利用者様がいるのに、どこも満員で断られること」です。空き情報は、それだけで強力な価値提供になります。

信頼を獲得し紹介につなげるアプローチ【実践編】

準備ができたら、実際のアプローチです。ここでも「相手の業務フロー」に溶け込むことを意識します。

アポイントと訪問のゴール設定

飛び込み営業は厳禁です。必ず電話でアポイントを取りましょう。
その際、「ご挨拶に伺いたい」ではなく、「地域の社会資源として、最新の空き状況と受入可能ケースの共有に伺いたい(5分程度)」と伝えます。これなら、相手にとっても会うメリットがあります。

訪問時のゴールは「契約」ではありません。「顔と名前を覚えてもらい、困った時に思い出してもらうこと」です。

面談時のキラーフレーズ:「困りごとはありませんか?」

自社の説明は手短に済ませ、相手の話を聞くことに時間の8割を使いましょう。 「最近、受け入れ先が見つからずお困りのケース(重度の方や、送迎困難な方など)はありませんか?」
「他事業所さんで断られがちな時間帯や曜日はありますか?」

この質問に対し、「実は、医療的ケアが必要な子の放課後の居場所がなくて…」といった話が出ればチャンスです。「うちなら看護師配置がありますので、そのケース検討できますよ」と返す。これが「営業」が「課題解決」に変わる瞬間です。

ザイオンス効果を狙う「定期接触」の仕組み化

人間は、接触回数が多い相手に好意を抱く心理(ザイオンス効果)があります。一度の訪問で終わらせず、継続的な接点を持ちましょう。月1回の「空き情報」FAX/メール: 毎月決まった時期に、最新の空き状況を送ります(許可を得てから)。
事例共有ニュースレター: 「こんな特性のお子さんが、こういう支援でこう成長しました」という事例をA4・1枚で共有。相談員にとっての「学び」にもなります。

経営視点の「カイゼン」:足で稼ぐ営業の限界とWeb活用

ここまで「リアルな営業」について解説しましたが、経営者としてもう一つ知っておくべき残酷な現実があります。それは「足で稼ぐ営業は、コストパフォーマンスが悪化しやすい」ということです。
管理者や児発管が営業に時間を割けば、その分現場のケアがおろそかになったり、加算業務が遅れたりします。

そこで導入すべきなのが、「相談員や家族に見つけてもらう」ためのWeb戦略です。

相談員も実は「ググって」いる

ベテランの相談員でも、すべての事業所を把握しているわけではありません。特に、新規開設の事業所や、引っ越してきたばかりの利用者様の対応、あるいは土日の緊急ショートステイなどを探す際、彼らもGoogle検索を使います。
「地域名 + 放デイ + 重症心身障害」「地域名 + 就労B + 送迎あり」などのキーワードです。

また、最近では利用者様のご家族自身がスマホで検索し、「ここの事業所が良さそうなので見学したい」と相談員に逆指名で持ちかけるケースが急増しています。

MEO対策(Googleマップ)は「Web上の看板」

相談員やご家族が検索した際、あなたの事業所は正しく表示されていますか?
ホームページがない、あるいはGoogleマップの情報が古い(写真がない、口コミがない)状態だと、「実態がわからず紹介するのが怖い事業所」と判断され、候補から外されてしまいます。

Web上の情報を整備することは、集客のためだけでなく、紹介してくれる相談員への「マナー(安心材料の提供)」でもあります。Googleビジネスプロフィール: 正しい住所、電話番号、営業時間、活動写真を登録。
福祉専門ポータルサイト: 地域の福祉情報が集まるサイトに詳細な情報を掲載し、SEO(検索順位)の面でも露出を増やす。

これらは24時間365日、文句も言わずにあなたの事業所の魅力を発信し続ける「優秀な営業マン」となります。

まとめ:アナログ(信頼)×デジタル(発見)の両輪で経営を安定させる

相談支援事業所への営業・連携は、以下の3ステップで「カイゼン」できます。

  1. マインドセットの転換: 「売り込み」ではなく、相談員の困りごとを解決する「パートナー」として振る舞う。
  2. ツールの整備: 相談員が使いやすい「スペック情報」と「最新の空き状況」を提供する。
  3. デジタル活用: リアル営業の限界を補うため、Web(MEO・ポータルサイト)で「見つけてもらえる状態」を作る。

特に、人手不足が深刻な福祉業界において、マンパワーに依存しないWeb集客の仕組みを持つことは、経営安定化の強力な武器となります。
「足を使った信頼構築」と「Webを使った情報発信」。この両輪を回し、地域で選ばれ続ける事業所を目指しましょう。