児発管(児童発達支援管理責任者)から「辞めたい」と言われたときに、最初にするのは条件の上乗せではありません。辞めたい理由を具体的に聞き取ることです。 児発管の退職理由には、個別支援計画の量、責任が1人に集中していること、現場との兼務など、業務の組み替えで軽くできるものが少なくありません。

それでも退職の意思が固い場合は、次の順で進めます。

  1. 退職日を本人と相談し、引き継ぎの期間を確保する
  2. 後任を確保する(外部からの採用、社内の有資格者、みなし配置の可否の相談)
  3. 児発管の変更を、変更の日から10日以内に指定権者へ届け出る

欠員が続いた場合に減算がいつから始まるかは、児発管が辞めたときの欠如減算の開始時期と割合で整理しています。こちらでは、辞意を伝えられてから退職までにすることに絞ります。なお、みなし配置の扱いや届出の様式は指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)によって運用が異なるため、判断の前に必ず確認してください。


1. 児発管が「辞めたい」と感じやすい構造

児発管の負担は、職種の設計から生まれやすいものです。本人の性格や根性の問題として扱うと、後任も同じ理由で辞めます。

負担の源起きやすいこと
個別支援計画の作成とモニタリング利用児童が増えるほど計画・面談・会議が増え、残業や持ち帰りになる
責任の集中事業所に1人だけのため、休めない・相談できない・ミスがすべて自分に返ってくる
現場との兼務人手が足りない日は支援や送迎に入り、計画の業務が後回しになる
保護者・関係機関との調整苦情や要望の窓口が児発管に集まる
処遇責任の重さに比べて、手当や賃金の差が小さいと感じる
資格の維持5年度ごとの更新研修を、業務の合間に受ける必要がある

児発管の要件(実務経験・研修)は令和5年6月30日の告示改正後の内容から変わっておらず、令和8年度報酬改定でも見直されていません。つまり、辞めた人の後任を探すのは、同じ要件を満たす少ない人の中からになります。辞意を聞いた段階で、残ってもらう道を探す価値は十分にあります。


2. 面談で聞くことと、打てる手

面談では、まず本人の話を最後まで聞きます。その場で説得や反論をしないことが大切です。理由が分かったら、事業所として変えられることと変えられないことを分けて伝えます。

本人が挙げた理由事業所が打てる手
計画作成の量が多い担当児童数の見直し、2人目の児発管の配置、基礎研修修了者に原案の作成を任せる
現場と兼務で時間が足りない現場の支援から外す時間帯を決める、送迎を別の職員に振る
事務作業が多い請求・記録の事務を事務職員に移す、記録や連絡のツールを見直す
相談できる人がいない管理者との定期面談、法人内の他の児発管との情報交換の場をつくる
給与・手当が見合わない処遇改善加算の配分や児発管の手当を見直す(賃金規程の改定が必要)
更新研修の負担受講費用の負担、受講日を勤務扱いにする
家庭の事情・体調勤務日数・時間の変更、休職制度の利用(児発管の配置要件との関係は指定権者に確認)

基礎研修の修了者は、実践研修の修了前でも個別支援計画の原案の作成に従事できます(東京都福祉局「サービス管理責任者等研修制度について」令和6年4月改訂)。計画の業務を分けられれば、児発管の負担を減らしながら、次の児発管も育てられます。社内での育て方は職員の育成計画の立て方を参照してください。

処遇の見直しには原資が要ります。令和8年度報酬改定(令和8年6月施行)で、障害福祉サービスの処遇改善加算は対象が障害福祉従事者に広げられ、児童発達支援・放課後等デイサービスの加算率も引き上げられました(「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」〈厚生労働省〉)。配分の決め方と要件は処遇改善加算の解説で確認できます。

約束できないことは約束しないでください。 「来年には2人目を採る」と言って採れなければ、信頼を失ったうえで辞められます。実行できる手を、時期と一緒に示します。


3. 退職が決まったら進めること

退職日を相談する

民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用について、解約の申入れから2週間で雇用が終了するとしています。後任が決まるまで退職を認めない、という対応はできません。 退職日の後ろ倒しは、あくまで本人の同意を得て相談するものです。有給休暇の消化も考慮して、引き継ぎに使える実際の日数を確認します。

引き継ぐもの

  • 利用児童ごとの個別支援計画と、次のモニタリング・計画見直しの時期の一覧
  • 担当者会議、保護者面談、関係機関(学校・相談支援事業所など)との予定
  • 苦情・事故・虐待防止に関する記録と対応中の案件
  • 加算の算定根拠になっている記録(算定中の加算の要件に関わるもの)

児発管が不在の期間も、個別支援計画の見直しの時期は止まりません。計画の期限の一覧は、退職日が決まった時点で最優先で作ってもらいます。

後任を確保する

後任の候補は、次の順で確認します。

  1. 社内に要件を満たす人がいるか。 管理者や他の職員が実務経験と研修(実践研修まで、更新研修の期限内)を満たしていないか、修了証で確かめます
  2. みなし配置が使えるか。 退職や病休など事業者の責めに帰さない事由で欠け、すぐに配置することが困難な場合は、「やむを得ない事由」として、実務経験要件を満たす人を児発管とみなして配置できる取扱いがあります。原則は1年間、欠如前からその事業所にいて欠如時に基礎研修を修了している人なら、実践研修の修了まで最長2年間です(令和5年6月30日 事務連絡「サービス管理責任者等に関する告示の改正について」、和歌山県掲載の写し
  3. 外部から採用する。 面接での要件の確かめ方は児発管の採用で確かめることにまとめています

みなし配置で注意が必要なのは、予告のある退職が「やむを得ない事由」に当たるかです。大阪市の案内は、急な退職は法人が予見できなかった場合に限るとし、おおむね30日以上の予告期間がある場合は対象外としています。辞意を聞いた時点で、指定権者に相談してください。 使えない前提で後任を探し始めるのが安全です。

変更届を出す

児発管が変わったときは、指定権者に変更届を出します。期限は変更の日から10日以内です(例:愛知県「事業所の変更等の手続きについて(児童福祉法)」)。添付書類(経歴書、実務経験証明書、研修修了証の写しなど)と提出方法は指定権者ごとに違います。後任が決まらない場合も、欠員が生じた事実と今後の見通しを早めに相談しておきます。


4. 児発管本人の側で起きていること

「児発管 辞めたい」と検索しているのは、経営者だけではありません。児発管本人が悩んでいることも多いはずです。本人の側から見ると、次のような迷いがあります。

  • 事業所に1人しかいないので、辞めると事業所が困ると分かっていて言い出せない
  • 転職しても、児発管として働く限り業務の中身は同じではないかと感じている
  • 児発管を降りて現場の職員に戻りたいが、それを言うと居づらくなると思っている
  • 更新研修の期限や、次の職場で配置できるかが気になっている

ここから分かるのは、辞意を口にした時点で、本人はかなり前から迷っているということです。経営者が取るべき対応は三つです。

  1. 言い出しにくさを減らす。 定期面談で業務量と体調を聞き、辞める以外の選択肢(担当の縮小、2人体制、現場職への異動)を普段から示しておく
  2. 「児発管を降りる」を選択肢に入れる。 児発管から現場職に戻りたい人は、事業所を辞めなくても済むなら残ってくれることがあります。その場合は後任の配置と賃金の扱いを、本人と具体的に話し合います
  3. 辞めると決めた人を責めない。 引き継ぎの質は、最後の数週間の関係で決まります。円満に送り出せば、非常勤での協力や、将来の復帰の可能性も残ります

5. よくある落とし穴

  • 辞意を聞いてから数週間、何もしない。 引き止めの結果を待っている間に、後任探しとみなし配置の相談の時間がなくなります。引き止めと並行して準備を始めます。
  • 給与の上乗せだけで引き止める。 理由が業務量なら、給与を上げても負担は同じで、数か月後に同じ話になります。
  • 変更届を後回しにする。 欠員を報告しないまま請求を続けると、不正請求を疑われます。期限内に届け出てください。
  • 次の児発管も1人で抱える体制にする。 同じ構造なら、同じ理由で辞めます。2人目の配置や基礎研修修了者の育成を、後任の採用と同時に進めます。

放課後等デイサービス・児童発達支援以外の障害福祉サービスでサービス管理責任者が辞める場合も、進め方はほぼ同じです。要件の違いはサービス管理責任者の採用で確認してください。


まとめ

  • 辞めたいと言われたら、まず理由を具体的に聞く。計画作成の量や責任の集中は、業務の組み替えで軽くできることがある
  • 引き止めは実行できる手を時期と一緒に示す。約束できないことは約束しない
  • 退職が固ければ、退職日の相談・引き継ぎ・後任の確保を並行して進める
  • みなし配置は「やむを得ない事由」が前提。予告のある退職は対象外とする指定権者もあるため、辞意を聞いた時点で相談する
  • 児発管の変更届は変更の日から10日以内。減算の開始時期は別記事で確認する

いずれの取扱いも、最終的な判断は指定権者が行います。手続きを進める前に、管轄の窓口で確認してください。